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ギター、エフェクター製作、オーディオなど、大好きな音楽の話をしていきます。

エフェクター自作講座【基礎編(2/3)】〜フィルター回路〜

どうも、lenheyvan です。

 

今日は抵抗とコンデンサを使ったCRフィルター回路のお話をしようと思います。

Cはコンデンサ、Rは抵抗です。 

 

前回お話しましたが、仕組みさえ覚えれば、計算はツールでやればいいのでめっちゃ簡単です。 

lenheyvan.hateblo.jp


(2022/9/4追記)
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丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編) ~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編) ~配線レイアウトの解説~

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ローパスフィルター

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ロー(低音)をパス(通過)するフィルターです。

つまり、低音域だけ通します

 

”だけ”はちょっと語弊がありますね。

正しくは、「ある一定の周波数以下を通す」です。

 

 仕組み

信号は左から右へ流れるものとみてください。

抵抗を通って、二股に分かれた下のほうにはコンデンサがついていて、その先にGND(※)があります。

※GNDは直訳すると「地面」です。調べると「基準電位との差がゼロ」とか出てきますが、電流のゴミ捨て場と覚えてください。そんなイメージで大丈夫です。

 

前回説明したように、コンデンサは高音域だけ通します。それを捨てるということは、つまり、二股の右には低音域だけ流れていくことになります。

 

はい、これでローパスフィルタの出来上がりです。

 

ハイパスフィルター

 f:id:lenheyvan:20210219234122j:plain

 

こちらはハイ(高音)をパス(通過)するフィルターです。

つまり、高音域だけ通します

 

 仕組み

見ての通り、ローパスフィルタの逆です。

 

コンデンサを通って、二股に分かれた下のほうには抵抗がついていて、その先にGNDがあります。

 

コンデンサは高音域だけ通し、二股に下の抵抗を通って低音域は捨てられます。つまり、二股の右には高音域だけ流れていくことになります。

 

はい、これでハイパスフィルタの出来上がりです。

 

なんかモヤモヤしませんか?

大抵こんな感じの説明がされていますが、「ちょっと待て待てい!」と思ったあなた。鋭いです。

 

結局、GNDに繋がっているコンデンサがあればローパスフィルターだし、

抵抗があればハイパスフィルターじゃん。初段の抵抗とコンデンサいらなくね?

 

はい、おっしゃるとおり。

あなたは正しい!!

 

最初の抵抗・コンデンサは別に無くてもいいんです。

 

じゃあ何でついてるのって話ですが、実はこの抵抗・コンデンサが無いと、どの周波数から下を捨てる/上を捨てるを調整できないんです。

 

カットオフ周波数

前回もちらっと出てきましたが、どこから捨てるかの周波数を「カットオフ周波数」と呼びます。

 

この絵をご覧ください。(手書きの汚い絵ですみません・・・)

f:id:lenheyvan:20210219235318j:plain

 

縦軸はゲインになっていて、0dbは素の信号です。

横軸は周波数になっていて、右に行くほど周波数が高くなります。

 

カットオフ周波数と赤字で書いている地点の周波数が、この周波数を境にカットしますよ(=カットオフ周波数)です。

 

厳密には記載のとおり、カットオフ周波数が-3dbの地点になります。

 

 

例えば、「いやー、ミッドローが多すぎてキレがないんだよなー。200Hzから下を削りたいんだけどなー」って時、ありますよね。

 

そんなときは、カットオフ周波数を200Hzにすればいいんです。

 

ローパスフィルタの抵抗を10kΩ、コンデンサを79.577nFにすれば200Hz以下をカットできます。

 

え?その数字どこから出てきたかって?

それはツールに計算してもらいました。

 

 

下の画像は私のAndroid携帯に入れている Electrodoc というアプリです。

(画面の液晶割れあり。。見にくくてすみません・・・)

 

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このアプリでR(抵抗)、C(コンデンサ)、周波数を入れると勝手に計算してくれるんです。

今狙ったカットオフ周波数は200Hzだったので、200Hzを入力して、Rは仮に10Kとしてみました。そうするとCが自動算出されます。このフィルタ回路の抵抗が仮に4.7kΩだと、Cの数値はまた変わります。

 

つまり、抵抗とコンデンサの定数で、カットオフ周波数をコントロールすることができるんです。

 

よくエフェクターの入力部の回路でもたつきになる低音域をローパスフィルターでカットしたり、ノイズの原因になる超高域をハイパスフィルターでカットしたりします。

 

次の例はかの有名なRangeMasterの入力部です。

 

ロリー・ギャラガーやブライアンメイが使用していたことで有名過ぎるペダルですが、YouTubeなんかで観てもらえれば分かるとおり、トレブルブースターというだけあって、トレブルがかなりゲインアップされたサウンドです。

 

例によって村田さんが、いつもの分かりやすい語り口で説明してくれています。

2:02あたりからです。


Treble Booster〜ロック・ギター・サウンドの礎を知る【デジマート DEEPER'S VIEW Vol.02】

 

回路的には、入力部で低音域をガッツリ削ってからトランジスタ(OC44というゲルマニウムトランジスタ)で信号を増幅しています。

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赤丸の部分がハイパスフィルターになっています。

コンデンサが0.005uF、抵抗が68KΩなので、ツールで計算すると、カットオフ周波数は468Hzより下をカットしています。

 

イコライザーを使う方ならわかると思いますが、ギターで468Hzというと、低音域ではなく、完全に中音域ですよね。

 

敢えて中音域から下をバッサリとカットすることであの独特のサウンドを生み出しているわけですね。まさにトレブルブースター。

 

私も結構好きで、何台か自作しました。

今は、一番状態の良いOC44のものを1つだけ保有しています。

ゲルマニウムトランジスタは個体差が結構あるんですよ)

 

最後に

 

どうですか。

割と簡単じゃないですか?

 

これが分かると、カットしたい音域を自分でコントロールすることができるので、イチから作らなくても、手持ちのエフェクターサウンド特性をチューニングするくらいは十分可能です。


例えば、今日ご紹介したRangeMasterの入力部にローパスフィルターも足して、高音域もカットすると、ハイミッドだけ残りますよね。

そうすると、ミドルブースターの出来上がりです。(バイパスとローパスのカットオフ周波数をうまく調整してバランスを取る必要はありますが)

 

そうすれば、マイケルシェンカーのようなワウ半止めサウンドだって作られちゃいます。

(抵抗とコンデンサの二つを足すだけで激変ですよ。面白くないですか?)

 

ここまでで、抵抗・コンデンサの役割、CRフィルターについて説明してきました。

 

次回はオペアンプにいきたいと思います。

↓↓↓

 

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