サウンドハウス

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ギター、エフェクター製作、オーディオなど、大好きな音楽の話をしていきます。

エフェクター自作講座【基礎編(3/3)】〜オペアンプ〜

どうも、lenheyvanです。

 

前回までで抵抗・コンデンサの役割、フィルター回路の説明までしてきました。

今日はオペアンプの話をしようと思います。

 

lenheyvan.hateblo.jp

 

 

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(2022/9/4追記)
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kindleエフェクター自作本を出版しました。

丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編) ~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編) ~配線レイアウトの解説~

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オペアンプとは

こんな虫のような形のICです。エフェクターの基板を見たことがある方は、見覚えがあると思います。

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 でも、オペアンプって何するもの?「心臓部」って言われてる分からんし、って感じですよね。

 

一言で言うと、信号を増幅(ゲインアップ)するものです。

まずはそのくらいの理解で大丈夫です。

 

オペアンプの種類

実はオペアンプには種類があります。

エフェクターで使われるものとしては、

があります。

 

なんてことはなく、シングルオペアンプは1回路入り、デュアルオペアンプは2回路入り、というだけです。

 

OD-1なんかは、クアッドオペアンプと言って4回路入りですが、1つのオペアンプに回路がいっぱい入っている、というだけのことです。

 

私がエフェクターをいじりはじめて、一番最初にやろうとしたのが、MXR Distortion+のオペアンプ交換です。

 

ド素人だったので、オペアンプを交換し、ウキウキして、さあサウンドチェック。

 

あれ!?音が出ない。

 

そりゃそうです。だって、シングルオペアンプ用の回路にデュアルオペアンプを載せちゃったんですから。

 

Distortion+は原始的な741系のオペアンプを採用しています。

μA741とかLM741というシングルオペアンプです。

(頭のμAとかLMとかは製造しているメーカーによって違うだけです)

 

そこに、デュアルオペアンプの定番であるRC4558Dをつけてしまったのです。

 

シングルオペアンプじゃダメということは理解できたのですが、どうしてもRC4558Dをつけたかったので、掲示板に投稿して、どうすればいいのかを聞いてみました。

 

知識が無くて言葉足らずだったんでしょう、意図がうまく伝わらず、

「やりたいことが分かりません」

「シングルオペアンプ用の回路ならデュアルは使えません」

「デュアルからシングルに変換したい意図が分かりません。わざわざそんなことする必要ないと思います」

と言われてしまい、途方に暮れました。

 

今では良い思い出です。

 

オペアンプの構造

これを見てください。(例のごとく手書きですみません)

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各端子の意味は次のとおりです。デュアルオペアンプのほうは1、2がついてますが、回路が2つなので、2個分使えるというだけです。

  • IN+:非反転入力
  • IN-:反転入力
  • OUT:出力
  • V+:正電源
  • V-:負電源

 

反転?非反転?

なんじゃそりゃだと思いますが、ここでは入力が2つあるという思ってもられば良いです。

出力は読んで字のごとく、オペアンプで増幅した信号を出力します。

正電源は、いわゆる電源のことです。エフェクターの場合ここに9v電源をつなぎます。

負電源はGNDにつなぎます。電位がゼロということですね。

 

どうやって増幅されるの?

ではどういう仕組みで増幅されるのでしょう?

 

非反転増幅回路

エフェクターでよく使われる非反転増幅回路で説明します。

Distortion+も非反転増幅回路を採用しています。

 

「非反転増幅回路」という難しい名前はひとまず置いておいて、まずはこの回路図を見てください。

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順を追って説明します。三角形のやつがオペアンプです。

①INから入力信号が入ってきます。(ギターの信号です)

オペアンプ非反転入力に入ります。(+のほう)

オペアンプの出力から二股に分かれていて、上のほうへいくと反転入力(-のほう)へ戻しています。これを負帰還と呼びます。

④負帰還があることによって、図にあるとおり、ゲインが(1+R1/R2)倍されて、出力されます。

 ※非反転入力(+)と反転入力(-)は電位差がゼロ(つまり同じ電位)になります。なります、というより、しようとします。そうなるようにするためにオペアンプは信号を大きくするように動作します。それが結果的に増幅となるわけです。

 

難しいように思えますが、上のような回路図になっていたらゲインが増幅される、増幅率は2つの抵抗値から算出できる、ということだけ理解できていればOKです!

 

ちなみに、非反転増幅回路というだけあって、この回路を通っても信号は「反転しない」です。位相という言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、信号の波(プラスとマイナス)をそのまま増幅します。

 

一方、反転増幅回路というものもありますが、そちらは位相が逆になります

つまり、信号のプラスとマイナスが逆になるということです。

 

通常はあまり気にする必要はないですが、以下のような2つの信号をMIXするブレンダ―のようなエフェクターでは、それぞれの位相を打ち消してしまうので気にする必要があります。

もちろん、このようなエフェクターでは位相を変えるスイッチがついているので切り替えるだけですが。

 

 

 

 

蛇足ですが、ギターのピックアップも向きがあります

フロントピックアップとリアピックアップを正しい向きにつければ、セレクターでMIXポジションにすると、2つの信号が合わさったものになりますが、片方を逆につけると打ち消しあっちゃうんです。

 

ただ、論理的には上記のとおり、それぞれ打ち消しあってしまい信号はなくなってしまうのですが(例えば+1.0v と -1.0vを足すとゼロですよね)、現実世界では微妙にズレるので、中途半端に打ち消された信号になります。

これをフェイズサウンドと言いますが、独特の面白いサウンドなので、敢えて使う場合もあります。ブライアンメイなんかはフェイズアウトしたサウンドが出るスイッチがギターに付いていますよね。

 

話を元に戻しますが、増幅は先程の計算式のとおりなので、例えばR1が1MΩ、R2が4.7kΩの場合、1000/4.7=212.7倍の増幅ということになります。

(これはDistortion+の定数です)

 

シングルオペアンプの回路にデュアルアぺアンプをつけれるのか?

冒頭の話に戻りますが、Distortion+のようなシングルオペアンプの回路にデュアルオペアンプをつけられるのか?ですが、オペアンプの構造」に記載した仕組みを知っていれば割と簡単につけることができます

 

もちろん回路を改造しても良いのですが、現代のエフェクターはプリント基板です。(緑色の板に、銅色の線が各パーツ間を道路のようにつないでいるアレです)

 

それを改造するのはちょっとハードル高いので、私は変換キットを作りました。

 

正直に白状すると、最初、プリント基板でやろうとして、ぐちゃぐちゃになって、最後はジャンパー線(今度説明します)で継ぎ接ぎフランケン状態にしてやっと音が出るようになったのですが、そんな苦労しなくていいです。

 

これが私が作ったキットです。2つのICソケットを使って作成しました。

 

上段にデュアルオペアンプを載せます。

画像がちょっと斜めになってますが、端子の番号は

 4 3 2 1

 5 6 7 8

です。

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シングルオペアンプ2つをデュアルオペアンプに変換する回路キットはよく市販されているのですが、これはいくら探しても無かったんです。

 

これがあると、すっと、シングルの回路にデュアルを載せてサウンドを試してみることができるのですごく便利です。そして作るのは超簡単です。

 

 デュアルオペアンプをD(画像の上段)、シングルオペアンプをS(画像の下段)とすると、こうすればよいです。

Dの1番→Sの6番

Dの2番→Sの2番

Dの3番→Sの3番

Dの4番→Sの4番

Dの5番→Sの5番

Dの6番→接続しない

Dの7番→接続しない

Dの8番→Sの7番

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これにデュアルオペアンプを載せて、シングルオペアンプ回路につけると、デュアルオペアンプの1回路だけ使用することになります。

RC4558Dなんかはシングル版は無いので、この回路で使いたい場合はこういうのがあると便利です。あくまでもサウンドチェック用なので、デュアルを採用するとなったら、回路設計はデュアル用にして作ってしまえば良いです。

 

最後に

オペアンプについてざっと解説してみました。

オペアンプという虫のようなパーツにちょっと親しみを感じてもらえたら幸いです。

 

よく電子回路の世界ではと呼ばれたりします。

 

ポタアンでもオペアンプは使われていて、製品によっては交換可能なものもあります。

ただ、オーディオとしては高性能なんだけどもエフェクターではイマイチ、

逆にオーディオ的にはローファイ過ぎてイマイチなものがエフェクターではいい味を出す、なんかはよくあることであり、そこがエフェクターの面白いところです。

 

もちろん、オーディオ用のハイファイなものがエフェクターにマッチすることだって当然あります。

 

一番は、色々試してみて、最後は自分の耳で判断することだと思います。

 

次回はいよいよ、Distortion+の回路図の徹底解説にいきたいと思います。

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