どうも、lenheyvanです。
Marshall Origin50の回路解説Part2です。
では続きを解説していきましょう。
Part1はコチラ
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回路解説
Part1ではV2Aに来るところまで解説したので、その続きからです。
V2A~V3B
V2Aで再度増幅しますが、Point11のプレート抵抗(R55)は通常100kのところを220kになっています。Part1で解説したとおりココの前段でバッファ回路部分で1/10に信号を減衰させているので、ここの増幅は強めに設計しているようです。
ここは300kくらいまで上げても良いと思います。
また、Part1で触れましたが、初段であるV1B、もしくは、二段目のV1Aのどちらかのプレート抵抗も同じくらいまで上げでも良いと思います。
V1B,V1Aの両方をやってしまうとFX Loopに送る信号の歪みが強くなり過ぎるので程々にしておいて、センドリターン後のV2Aで歪ませるのが良いかと思います。
Point10のカソード部は2.2k/22uFになっていて、コンデンサの定数が大きいですね。
ここはもう少し小さめに定数にして高音域をブーストしたほうが良いと思います。
Point12のカップリングコンデンサは22nFくらいが良いかなと思います。
カップリングコンデンサを通ったあとはマスターボリューム回路に繋がっています。
VR106がマスターボリュームノブになっていて、青線の通り信号が流れて次段へ続きます。
また、マスターボリュームの右側にVR107があり、これはプレゼンスノブです。
C106があることである周波数から上の帯域を持ち上げる効果がありますが、100nFという伝統的な定数になっています。これはかなり高い帯域を持ち上げていますが、もう少し大きい定数にするとミドルから持ち上げるようにすることが可能です。
私のお気に入りの定数は0.68uFです。
V2Aで増幅された信号は、最後にPoint14のカップリングコンデンサを通ってV3Bにいきますが、100nFちょっと大きいですね。
ちょっとブーミーな感じになるので22-47nFくらいがオススメです。
V3~V4,V5
Point16のV3A/V3Bはフェーズインバーター(位相反転器)というもので、スピーカー駆動させるために正相と逆相の2つの信号を作り出すところです。
これが最後のプリ管(3本目)です。
正相と逆相を2つの信号を作り出して、Point17のパワー管でスピーカー駆動できるレベルまで信号を大きくして本アンプの最終出力となります。
本アンプのようにV3(フェーズインバーター)の前にマスターボリュームを配置するのが割と多いです。プリ管2段目までで歪みを作るためです。
ただ、実はフェーズインバーターでも歪みがそこそこ付加されます。
なので、この方式だとマスターボリュームをそこそこ上げないとフェーズインバーターの歪みが乗らないんですよね。
なので、フェーズインバーターの後にマスターボリュームを配置することでプリ管の歪みはフルに乗せるというやり方もあります。
これをPPIMV(Post Phase Inverter Master Volume)と言います。
フェーズインバーター前だとPostではなくPreになるので、これも略したらPPIMVじゃないか、ということになるのですが、一般的にはPPIMVはPostのほうのことを指します。
モディファイ
私のモディファイでは全体の定数変更と合わせて、PPIMV化と2ゲインノブ方式(TILTノブをゲイン2へ)も行ったのでそれについても解説しておきます。
PPIMV
全体像としては下図のような感じです。
PPIMVの設計方式は3,4パターンくらいあるのですが、一番インストールしやすいのがここで採用しているType3というものです。
サウンド的にはType2のLar/Mar方式というのが一番良いらしいですが、デュアル可変抵抗器(PECのような高価でハイスペックなものを入手して2つの可変抵抗器がかなり精度高くないといけない)が必要だったりパワー管へ入るところのグリッドリーク抵抗部を回路変更したりと結構面倒です。また、海外のForumでは、サウンド的にそこまで変わらないという意見もあったりしてType3を採用しました。
これは、V4,V5(パワー管)に入る直前のR38,R39から信号を取って、可変抵抗器に入れてブレンド具合を可変させるだけです。
何故これでマスターボリュームとなるのか?ですが、V3のフェーズインバーターで正相と逆相の信号を作り出すと説明しました。
よって、パワー管へ入る直前のR38,R39の信号は逆になっています。
正相と逆相を混ぜると打ち消しあうので信号が消えます。
これはギターのフェーズアウトと同じ原理で(ギターの場合は微妙にズレるので完全には消えませんが)、すごくペラペラなサウンドになりますよね。
マスターボリュームを最小にする(左に回し切る)と正相と逆相を100%ブレンドされるので音量がゼロになります。
最大にする(右に回し切る)と正相と逆相がブレンドされないので音量がMAXになります。
VR106の可変抵抗を流用しますので、オリジナルの位置からマスターボリュームを剝がします。回路図で言うと以下の×の部分です。
次のように基板からマスターボリュームを外します。
そして裏面を以下のように接続します。これで、ここに来た信号はそのまま折り返されて戻っていきます。
取り外した可変抵抗は本体に直付けしちゃいます。
そして、こんな感じにシールド線を取り付けます。念のためホットボンドで外れないよう保護してあります。
※信号線は発振やノイズ混入を防ぐためシールド線を使ったほうが良いです。
ギターアンプではRG174が定番として使用されます。
R38,R39と接続すれば出来上がりです。
この方式のPPIMVはノブ回し始めが急激にボリューム変化するので、滑らかなボリューム変化とはいきませんが、フェーズインバーター前のときと比べて、小音量時の歪みのの乗り方は格段に変わりました。
2ゲインノブ化
次はTILTノブをゲイン1(初段V1Bのゲイン調整ノブ)の回路から切り離して、二段目(V1A)のゲイン調整ノブとして利用する改造です。
これを行うと、2つのゲイン調整ノブでサウンドコントロールできるようになり、サウンドメイクの幅が格段に広がります。
初段のゲイン1(V1B)で全体のゲインコントロールをしつつ、キャラクター(増幅周波数)の違う2つの増幅段の信号割合を変えることができるので、ミドル厚めのサウンドにしたり、ハイ上がりのキレの良いサウンドにしたりをコントロールできるようになります。
全体像はこんな感じです。
まず、TILTノブの機能を除去しちゃいますので、初段のゲインノブの回路から切り離します。
TILTノブは、C102とワイパー部分(R101の上部)の2箇所でゲインノブの回路と接点を持っていますのでこれを切り離します。
C102は取り外してしまうだけで導通しなくなるのでOKです。
R101の上部は基板上、信号が流れないようにする必要があります。
一番楽なのはドリルで穴開けしてしまう方法です。
下図の赤丸部分がR101からTILTノブへ信号を送っている基板部分で、ここに穴あけします。穴あけしたらテスターで導通しないことを確認しましょう。
ボリューム回路として使うのでC101のコンデンサは取り外してJUMP(ジャンパー線)で導通させてしまいます。
これで、TILTノブは分離できたので、あとは、二段目(V1A)の増幅後の信号をTILTノブの入力に入るように変更し、出力をワイパー(ポットの真ん中の端子)から取り出して、また元に戻してあげます。
二段目(V1A)の増幅後の信号はR64→CN22を通ってトーン回路へ流れるようになっているので、一旦R64の後ろで流れを切って信号を取り出します。
ここも基板に穴あけが必要なのでドリルを使います。
表面はこうなっていて赤丸部分が穴あけしたところです。
裏面を見ると導線が分かりますが、赤線の通り信号が流れるようになっていますのでこれを断ち切ります。R64→CN22の一番左の端子への流れの部分です。
これで準備は整ったので、R64から取り出した信号をVR102の上部(C102との接点)部分に繋いであげて、VR102の出力から取り出した信号をCN102の一番左の端子に戻してあげます。
下図の赤線がR64から取り出した信号をVR102の上部(C102との接点)部分に繋いでいる部分です。
VR102の出力から取り出した信号をCN102の一番左の端子に戻す部分は以下赤線部分です。
最後に
色々改造を加えたのでそこそこな手術でしたが、満足いくサウンドにできました。
一点注意点として、エフェクターなんかでもよくあるのですが、本アンプは鉛フリーにハンダが使用されているようで、既存のハンダを溶かして吸い取るのが中々大変です。
そういうときは、鉛が含有されているハンダ(普通にKester44でも電子工作用の安いやつでも鉛入っていると思います)を最初に溶かし混ぜてあげてから吸い取るとうまくいきます。(それでも場所によっては結構苦戦しました)
ではまた!