サウンドハウス

lenheyvan’s music

ギター、エフェクター製作、オーディオなど、大好きな音楽の話をしていきます。

フランジャーのモーメンタリースイッチ化

どうも、lenheyvanです。

 

前に「18v仕様のエフェクターを9v電源化する方法」ということで、MXRのフランジャーM117Rを18v化しました。

※M117Rは18vアダプターが付属していてそれを使ってね、ということになっています。が、それだとボードが組みにくい(M117Rだけ別電源になってしまう)ので、内部で18v昇圧するという荒技をやりました。

 

 

lenheyvan.hateblo.jp



これがそのM117R。現行品です。

 

エディシグネチャーモデルはコチラ。

 

 

これでボードがいい感じになったので「心置きなくUnchainedを弾ける♪」と思っていたのですが、しかーし、困ったことに、この曲、ON/OFF操作をこまめにやらないといけなくて、足がせわしないんです。

練習と慣れなのでしょうが、ちょっと私の技術には足でカチャカチャしていると演奏に集中できません・・・

これは困ったということで、モーメンタリースイッチ化することにしました。
※踏んでいるときだけONになるスイッチのことです。

 

というわけで、M117R改造プロジェクト第二弾です。

 

1.開封の儀

M117Rの蓋を開けて、スイッチ部の配線を確認します。


他のMXRペダルで採用されている普通の機械式スイッチですね。

基板上で配線されてますが、同じ6ピンのDPDTスイッチ同士であればそのままポン付けできそうです。

2.スイッチ取り外し

それではスイッチを取り外していきます。

いつものように、キレイに半田取りするために、先に追加で半田を盛ってから、吸い取り線で除去していきます。

 



取れました。

 

あ、そうそう。話は逸れますが、先日半田こてのこて先を買い替えました。
調べると色々な形状があるんですね。

ずっと鉛筆型を使ってましたが、熱を効率良く伝えるには少し斜めに当てる必要があって、ちょっと使いにくいなーと思っていたので、新調してみました。



私が使用しているのはHAKKOの半田こてです。
半田こて業界(?)の中では有名なメーカーだと思います。

見てみてビックリしたのですが、こて先については色々な種類があって、面白いです。
以下ページを見てBC型とD型で迷った挙句、一般的っぽいBC型にしました。

今度はD型に挑戦してみるかもです。

中々面白いので見てみてください。www.hakko.com

 

 

3.スイッチ交換

では、スイッチ交換していきます。

今回用意したフットスイッチがコチラ。
左がオリジナルのスイッチ、右が今回用意したモーメンタリースイッチです。


桜屋電機さんで購入しました。
「alpha 【Momentary】 Foot Switch DPDT Silver Contact 2回路フットスイッチプロ用銀接点モメンタリー」というやつです。

少し長さが短めですが、大きさは同じなので干渉の問題は無さそうです。
万が一長さが足りなくて基板に届かなくても、配線すればいいだけなので大丈夫そうです。


まずは元のスイッチと同じ向きで、↓の突起部分に合わせてモーメンタリースイッチを仮付けして動作を確認してみます。


そうすると、、、


ありゃりゃ・・・

常時ONになってしまいました。(フットスイッチを踏むとOFFになる)

向きを反対にしないとダメですね。
テスターで確認してからやれば良かった。横着してしまいました。

急がば回れですな。

というわけで、左右反対につけないといけないので、突起部分を削り取ります。


リーマーを軽く回してやると、キレイに取れました。


では、これで本付けしていきます。
半田つけた後の写真を撮るのを忘れてましたが、6ピン部分を半田付けして終了です。



試しに弾いてみました。




これは使いやすい♪

これでVANHALENのUnchainedを弾くのが楽になる。

 

 

最後に

モーメンタリースイッチは、たまに踏みにくい(カチッとまではいかないけど、段差を感じる)ものがありますが、これは比較的ソフトで踏み心地は良いです。

VANHALENのAin't talkin' 'bout loveも瞬間的にフェイザーをかけるところがあるので、MXR Phase90もモーメンタリースイッチ化を検討しましたが、どちらかと言うとかけっぱなしにする場面の方が多いし、かと言って、モーメンタリースイッチを増設するにはスペースが無い(あったとしても踏みづらい)ので、そちらは断念しました。

何はともあれ、フランジャーを踏んだ時だけかけたい、という方にはこのスイッチ交換は簡単に改造できるので、お試しあれ!

 

ではまた!

 

 

 

ペダルでドリル奏法!?

どうも、lenheyvanです。

 

昨年、TC楽器の第一回改造エフェクターコンテストに参加しました。

おかげさまでBARKS賞という賞をいただき、インタビュー、BARKSの記事にしていただきました。大変ありがたいことでございます。

問い合わせしたところオリジナルでも良いとのことだったので、ちょっと飛び道具的な面白いやつを出してみようと考えました。

その結果、思いついたのが、ドリル奏法のサウンドを出すエフェクターです。

あれって、ピックアップの近くで電動ドリル(ポールギルバートはマキタを愛用していたはず)をウィーンってやると、その音を拾って、アンプでも歪が加わって、ギュワーンという音になるという仕掛けです。

エフェクターでやるので、エフェクターにピックアップを乗っけて、その近くでドリル音近い音を出せばいけるのでは、ということで小さいモーターでやることにしました。

これがあれば、ドリル無くてもMR.BIGのダディブラや、VANHALENのパウンドケーキが再現できるという代物です。(本当か?笑)

 

 

設計

 

至って単純な仕掛けです。

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見かけのインパクト重視にしたかったので、TrueBypassではなく、モーター音の音量調整やトーン調整も無しです。

INPUTの信号はOUTPUTにそのまま直結しており、ピックアップからの出力も常に合流しています。モーメンタリースイッチを踏むと、モーター・LEDがONになります。

モーターもLEDもプラス側は常にショートしており、モーメンタリースイッチを踏むとマイナス側もショートされて動作します。

本当は電源はACアダプターで完結したかったのですが、モーターの規格に必要な電流が作り出せず、モーターは電池、ACアダプターはLED用という仕様になってます。

 

製作過程

まずはアルミダイキャストケースの鏡面加工、穴あけからです。

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一番下の大きい穴がモーメンタリースイッチ用、上部の大きい4つの穴が、ピックアップ保護用にバーを取り付ける穴です。(保護の意味もありますが、どちらかと言うとデザイン的にカッコイイからという理由でつけています)

小さい穴はピックアップの出力導線やモーターの導線用、あとはLED2個分の穴です。
華やかにしたかったので、ONのときに緑と青のLEDがピックアップ下で光るようにしました。

またLEDは直進性が強いので光の漏れが弱くなる懸念がありました。

そこで、光を散らすためにブラスト加工といって、LEDの表面を細かめのやすりで軽くスリスリして、光が分散するようにしました。表面が軽く白くなったらOKです。


これに部品を取り付けていって、下部だけGoldに塗装したのがコチラです。
(あまり途中経過の写真が無くてスミマセン・・・)

ピックアップ保護用のバーはホームセンターでちょうど良いサイズのを見つけてGETしてきました。

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このエフェクターの名前をどうしようか考えたのですが、ちょっとWahっぽいなぁと思い、サウンド的にはBabyではなくてBearだから、ということで「Cry Bear」と命名しました。


で、毎回悩むのですが名前をどうやって入れようかと。

レタリングシートは何か安っぽい気がするし、かといって、キレイに入れられる機材を持っているわけでもないし。

というわけで、Goldの表面を削って文字入れすることにしました。


百均で入手したミニルーターを使います。

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いきなり手書きは絶対ミスるので、「Cry Bear」の文字を印刷して、それを当てて削ることにします。

何種類かの大きさの文字を印刷して、実物に当ててみてバランスを見ます。

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バランス的にはこんな感じで。

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ただ、いきなりはコワイので、裏蓋で練習です。

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う~ん、、、下手くそ。。
何か嫌な予感しかしません・・・

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コワイけどやるしかない!
いってみます!

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そして、嫌な予感的中。
下手過ぎる・・・

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でも私は思いました。
この下手くそ感が、手作り感があって逆にいいのでは、と。


そう自分に言い聞かせて、これでヨシとします。


最終的にモーターはピックアップの上ではなくて、横のほうが好みのサウンドになったので位置調整して、家にあったキーホールダーのよく分からない輪っこを見つけ出してきて、固定用に使います。

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完成

エフェクトONするとLEDがキレイに光ります。

ピックアップの左下が緑、右上が青です。

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やっぱり、暗闇のほうが華やかですね。
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実はこれ、モーターの角度を変えるとサウンドが変わります。

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というわけで、キワモノエフェクター「Cry Bear」の製作過程のご紹介でした。

 


BARKS賞受賞時のインタビュー記事はコチラです。

 

 

 

こういう変なエフェクター考えるのって楽しいですね。

 

少し実践向きに、ドリル音のボリュームとTrueBypassスイッチ増設をしようかなーと思っています。


また、変なの作りたいなー♪



ではまた!

18v仕様のエフェクターを9v電源化する方法

どうも、lenheyvanです。

 

最近、MXRのフランジャーM117Rを手に入れました。

VANHALEN好きの私としてはPhase90と並び、必須アイテムです。

 

エディシグネチャーのEVH117も良かったのですが、デザインがもろエディストライプなので、うまくもないのにエディシグネチャー使ってるよと思われるのも恥ずかしく、こちらにしました。

 

 

 

これで、unchainedが弾ける♪
早速、こいつをかけて弾いてみましたが、いやー楽しい。気分だけはエディです。

 

ただですね、このエフェクター18v仕様なんです。

 

18v用のACアダプターはちゃんとついてくるのですが、私のボードで活躍しているパワーサプライは9v電源のみで、コンセントを挿せる口はありません。

   

これだとボードで完結できなくなり、別途、Flangerだけコンセントに挿すか、パワーサプライをコンセント対応のものに購入し直さないといけません。

 

今のパワーサプライを売って、コンセント対応しているものを購入し直すと、売却額を鑑みても追加投資1万は必要そうです。

 

かと言って、このエフェクターだけ別コンセントで対応するのも、なんかエフェクタボードが中途半端な感じがします。

 

いやー、正直どっちも厳しいですねー。。

 

考えたあげく、私は思いつきました。

 

エフェクター内部で9vから18v昇圧すれば、いいんじゃないの?

 

昇圧回路を作って、エフェクター内部に組み込むというハードルはあるものの、やってみる価値は大いにあります。

 

というわけで、18v仕様エフェクターの9v電源化プロジェクトです。

 

作業工程は以下のとおりです。

  1. 昇圧回路の作製
  2. ケース分解&基板取り出し
  3. DCジャック取り外し(ついでにLED交換)
  4. 昇圧回路の取り付け

1.昇圧回路の作製

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実は以前、歪みエフェクターの9v/18vの比較実験をしたのですが、そのときに作製していた回路が余っていたので、それを活用します。

 

回路の作り方は以下の過去記事で詳しく書いてますのでここでは割愛します。

 

ちなみに左側のコンデンサニチコンのFineGoldですが、低ESRのOS-CONなどのほうが良いのでは、とツイッターでお世話になっているフォロワーさんからアドバイス頂きました。

 

お仕事柄、この辺は知識豊富な方で、私のような素人にはありがたい情報です。試される方はOS-CONをお勧めします。

 ↓↓↓

lenheyvan.hateblo.jp

 

2.ケース分解&基板取り出し

まずは裏蓋を外します。

真ん中に電池を置くようのケースのようなものがあります。

電池用ホックが2つあり、ここからも18v仕様であることが分かります。

 

このスペースがあれば、昇圧回路を組み込むのはスペース的には全然問題なさそうです。

 

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そして、電源部がここです。

これを外して、いい感じに配線して、戻すことになります。

 

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まずは、この基板を取り外します。

 

普通にポットを押して外そうとしたのですが、基板が動きません。

よく見ると、ポットの切れ込み部分がケースに刺さっているので、こいつをマイナスドライバーで押してみます。

 

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う~ん、ダメっす。。

これでも基板は動きません。

 

ケースを見回してみると、どうもDCジャックがケースに引っかかるようになっているのでこれが原因のようです。

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またもやマイナスドライバーで押してみました。

結構固かったですが、グイグイ押してみました。

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ようやく基板から外れてくれました。

基板を取り出すだけで一苦労です・・・

 

試される方は強引にやり過ぎて壊さないようお気を付けください。

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3.DCジャック取り外し(ついでにLED交換)

せっかくなので、LEDを交換してモディファイ感を出していきたいと思います。

 

このエフェクターには何色が合うかなー?

 

こういうのを考えるのも楽しい時間です。ブラックな筐体なのでPOPな感じではなくシックな感じでいきたいと思います。

 

LEDの在庫を見ると、いい感じの色がありました。

パープルです。これに決めます。

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例によって、ハンダを盛ってからハンダ吸い取り線でハンダを除去します。

(このやり方は先程の過去記事にも記載しています)

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キレイにハンダが取れました。

ここにさっきのパープルLEDを取り付けます。

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取り付け完了!!

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次にDCジャックです。

こちらもキレイに取り外しできました。

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4.昇圧回路の取り付け

さて、メインの配線処理です。

 

(モディファイ前)

  DCジャックのプラス→基板電源

  DCジャックのマイナス→基板GND

(モディファイ後)

  DCジャックのプラス→昇圧回路のIN(9v)→昇圧回路のOUT(18v)→基板電源

  DCジャックのマイナス→基板GND

  昇圧回路のGND→基板GND

 

とすればOKのはずです。

 

絵で描くとこんな感じです。

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ポイントは

・DCジャックのプラスは、昇圧回路を経由させてから、基板の同じ場所(電源)へ配線

・DCジャックのマイナスは、昇圧回路のGNDと一緒に基板の同じ場所(GND)へ配線

・DCジャックの電池スナップは元の通り配線

です。

 

 作業の前に一応、付属の純正ACアダプタの電圧を測ってみます。

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ちゃんと18v出てますね。

 

では、DCジャックと昇圧回路を配線します。

※画像ではDCジャックと昇圧基板を完全に結線してしまってますが、この状態だと物理的に基板に取り付けできなかったので、後で一回外してから再度結線しました。

 

先程の絵に記載したとおり、DCジャックのプラスと基板の電源はショートさせないよう注意する必要があります。

DCジャックのプラスは下の画像の矢印部ですが、そのまま基板に戻すと、基板とショットしちゃいます。

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そのため、絶縁テープでショートしないようにしておきます。

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取り付け前に、昇圧回路を通した状態での電圧を測っておきます。

ダイオードの電圧降下があるので、若干下がりますが、17v弱は出てるのでOKとします。

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あとは、さっきの絵のように基板に取り付けていきます。

 

昇圧回路は基板の背面に置くので(裏蓋を開けて上面から見ると基板の背面になってます)、それを踏まえて基板側の穴をうまく使って配線していきます。

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これで配線は完了です。

音出し確認OKです。

 

内部トリマーが4つありますが、内、2つはいじっても違いが分かりませんでした。

 

メモし忘れたので記憶ベースですが、確かどれか1つのトリマー(右上のだったかな?)がかかり具合をエグくできるやつで、エグくしたほうがunchainedのあのサウンドに近かったのでMAXしたと思います。

 

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では、またケースに戻していきます。

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ケースに戻して終わったら、念のため内部でショートしてないかのチェック。

はい。問題ありません。完成です!

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最後に

多少の電子回路の知識は必要になりますが、パワーサプライがACアダプターを直接挿せるタイプではない場合は、この昇圧回路組み込み作戦は有効です。

 

ただし、裏蓋を開けて、昇圧回路が入るスペースがあるかは要確認ですね。

 

XOTIC系とかだとちょっと厳しいかも知れません。

(昇圧可能の製品なので、この作戦のコンセプトにはピッタリなんですけどね・・・)

 

MXRサイズ以上あれば大丈夫そうな気がします。

 

昇圧回路自体は部品数少ないので簡単に作れますし(部品代も数百円くらいじゃないでしょうか)、あとはエフェクターの配線を今回やったように接続してやれば割と簡単にできちゃいます。

 

いやー、最近昇圧にハマってきました。

レンジが広い音って弾いてて楽しいんですよね♪

 

みなさん良きエフェクターライフを。

 

ではまた!

 

 

 

古いエフェクターへのDCジャック・LED増設 & トゥルーバイパス化

どうもlenheyvanです。

エディに憧れるギタリストは絶対持っていなければならない、と中学校でも習ったMXRのPhase90とFlanger(M117R)ですが、今回はPhase90の痒いところに手を届かせる改造についてです。

 

もちろん、ビンテージエフェクターについても同様の方法で改造が可能です。


Phase90は今も現役(2021/8現在)で販売されていますが、通常版と復刻版があります。主な違いは次のとおりです。

 

 

 

  • 現行版(M101)

 ・スクリプトロゴ
 ・LEDあり
 ・DCジャックあり
 ・エフェクトONにするとゲインが少し上がり、かかり方がエグい

 

  • 復刻版(CSP026 '74 Vintage Phase 90)

 ・筆記体ロゴ
 ・LEDなし
 ・DCジャックなし
 ・エフェクトONにしてもゲインは変わらず、かかり方が爽やか


現行版で一番嬉しいような嬉しくないようなところはゲインが上がるところです。
ゲインが上がるので音量も少し上がります。

 

バッキングで特定のパートのみかける、なんて場合は急に音量が大きくなるので勝手が悪いんですよね。


逆にギターソロで目立たせたい、なんて場合はこっちのほうが嬉しいかも知れません。
これがイヤで、かの有名なR28 Modでビンテージ・復刻版同様のシュワシュワ爽やかフェイザーにしている方も多いかと思います。

 

エディは結構、前者の使い方があったりするのでVANHALENやるなら復刻版かなと思い、購入しました。

 

現行版がぎゅわわ~ん だとすると
復刻版はしゅわわ~ん です。

 

復刻版は守備範囲が広く感じます。
クランチ気味でカッティングなんかすると、ちょっとオシャレな雰囲気を演出できます。


そしてもう1点悩ましいのが復刻版はDCジャックがついてないところです。


ノイズ除去の観点からは電池最強なのですが、切れるかも知れないというところに神経を使いたくないので、歪み系も何でも、私はもっぱらACアダプタ派です。

 

あと、LEDがついてないのでON/OFFが分からないところも実践ではちょっと使いにくいところです。意図しないところでONになったりOFFになったらイヤなので。

 

というわけで、DCジャック増設&LED追加プロジェクトです。
ついでにフットスイッチも3PDTスイッチに交換してTrueBypassにしちゃいます。


作業工程は以下のとおりです。

  1. 位置決め
  2. ケース穴あけ
  3. 既存配線の確認&把握
  4. パーツ取り付け(DCジャック、LEDホルダー、3PDTスイッチ)
  5. 配線

1.位置決め

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3PDTスイッチは既存のSPDTスイッチ(フットスイッチ)と径が同じだったので加工無しで取り付け可能でした。
なので、穴あけはDCジャックとLEDホルダーの2箇所です。

 

まずは内部キャビティ内のスペース的に問題なさそうな場所を探します。
LEDは割と狭い場所でも取り付け可能ですが、DCジャックは少し内部にスペースが必要です。

 

スペース的に余裕ありそうなのは、IN/OUTジャックの下のほうです。

DCジャックはOUTジャックのすぐ下が使いやすくて好きなのでそこにします。

 

LEDは現行品や一般的なエフェクターではど真ん中が多いですが、オリジナリティ出したいのとそこじゃないほうがバランス的にカッコ良さそうなので違う場所にします。あまり迷うこともなく直感で右上にしました。

 

2.ケース穴あけ

穴あけ加工はTAKACHIやHAMMONDで散々やってきましたが、MXR製ケースの加工は初です。

 

まずはいつも通り場所を決めたら、ドリルがズレないようにセンターポンチで小さな窪みを作ります。

 

では、電動ドリルで穴あけしていきます。

 

最近はステップドリル(タケノコみたいに段々になっているやつ)が楽なので、これで一発で空けます。


ちゃんと抑えてないとケースごと回ってしまい、ドリルが持っていかれて最悪ドリルが折れて飛んできてキケンなので、しっかりケースを抑えます。

 

 

あれ?入っていかない

 

 

 

っていうか熱ッ!

 

 

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ステップドリルが入っていかず、クルクル回っている内に摩擦熱でケースがゲキ熱になりました・・・

 

MXR製ケース(と言うか他メーカーの市販品も同じ?)はちょっと厚めで、1000円程度の安いドリルではダメなようです。
TAKACHIやHAMMONDでは普通に空けれたんですけどね。


そこで、ホームセンターで購入した普通のドリルに替えて、小さい穴を空けます。

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今度はすんなりいきました。
ちょっと汚いですが・・・

 

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ここからまたステップドリルに替えて穴あけします。


おう、いけるいける。

 

 

ガコッ!

 

 

あぶねー

 

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慎重にやっていたつもるなのですが、危なく大きすぎる穴を空けてしまうところでした。

 

ステップドリルは上から圧をかけすぎると、一気に大きな穴が空いてしまうので要注意。適度な圧で、一段づつあけていきましょう。。

 

DCジャック、LEDホルダーを通してみて、ぴったりの穴ができたので、ちょっと汚いですがこれにて穴あけは終わりです。

 

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3.既存配線の確認&把握

パーツ取り付け&配線の前に、既存配線を確認しておきます。

見たところこんな感じになっているようです。

 

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①電池ホルダーから繋がっている赤の線が基板の電源プラスへ
②電池ホルダーから繋がっている黒の線がINジャックのマイナス(スリーブ)へ
③INジャックのプラス(つまりギター信号)がSPDTスイッチのINへ
④SPDTスイッチのINから基板INへ
⑤基板OUTからSPDTスイッチの端子1へ
⑥SPDTスイッチの端子2からOUTジャックのプラスへ
⑦基板のGND線はOUTジャックのマイナスへ
⑧INジャックのGNDとOUTジャックのマイナスを結線

 

シンプルな配線だけど、字で書くと分かりにくい・・・

 

絵で書くとこんな感じです。

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割と分かりやすい配線なのですが、意外だったのが「INジャックのGNDとOUTジャックのマイナスを結線」の部分。

 

これGNDループになっちゃんじゃないのかな??

ついでなので一点アースにしちゃいましょう。


これで設計フェーズは完了です。

4.パーツ取り付け(DCジャック、LEDホルダー、3PDTスイッチ)

最初にスペース的に問題ないか確認したものの、いざ取り付けると予期せぬ問題が出ることも度々ありますが、今回は大丈夫なようです。

 

DCジャックは十分余裕ありです。
六角ネジもモンキーレンチでしっかり締めれます。

 

たまに、モンキーレンチが入るスペース無くてラジオペンチで締めることもあるけど、ちゃんとガッチリ締めれないのとネジがなめってくるのがイヤなんですよ。その点今回は問題ありません。

 

LEDホルダーはちょっとスペース小さい目なのでさすがにモンキーレンチは入らないのでラジオペンチで締めます。

 

ガッチリではないけど十分締めれましたのと、後でホットボンドで固定するのでこれでOK。

 

3PDTスイッチは、ケースにスリットが入っているのでそれに合わせて取り付けます。

 

 

あれ!?縦になっちゃった。

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いつも横にして取り付けしているのでちょっと違和感。

まあ、外からの見た目は変わらないし、配線上も問題はないのでこれでOK。

 

5.配線

作業後の配線図はこんな感じになります。

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では項番1に記載した既存配線からの変更ポイントを赤字で記載します。

 

①電池ホルダーから繋がっている赤の線が基板の電源プラスへ
 →基板の電源プラス箇所にもう1本線を追加して、DCジャックへ接続します(電池もそのまま使用できるように電池ホルダーの線はそのままにしておきます)

 

②電池ホルダーから繋がっている黒の線がINジャックのマイナス(スリーブ)へ
 →INジャックのマイナスにもう1本線を追加して、3PDTスイッチの5番(GND)へ結線します。(黒の線はこのままにしておきます。理由は①と同じです。)

 

③INジャックのプラス(つまりギター信号)がSPDTスイッチのINへ
 →SPDTスイッチから外して3PDTスイッチの4番(IN)へ結線します。

 

④SPDTスイッチのINから基板INへ
 →SPDTスイッチから外して3PDTスイッチの1番(基板IN)へ結線します。

 

⑤基板OUTからSPDTスイッチの端子1へ
 →SPDTスイッチから外して3PDTスイッチの3番(基板OUT)へ結線します。

 

⑥SPDTスイッチの端子2からOUTジャックのプラスへ
 →SPDTスイッチから外して3PDTスイッチの6番(OUT)へ結線します。

 

⑦基板のGND線はOUTジャックのマイナスへ
 →OUTジャックから外して3PDTスイッチの5番(GND)へ結線します。

 

⑧INジャックのGNDとOUTジャックのマイナスを結線
 →この線を切断します。そして、INジャックのGNDとDCジャックのマイナスを結線します。(これでGNDループを断ち切って一点アースになります)

 

----- ↓↓↓追加作業ここから↓↓↓ -----

⑨LEDを取り付けます。筐体がオレンジ色なので同系統の色にしようと在庫を見ていたら、桜色が余っていたのでこれを採用します。LEDのプラスはDCジャックのプラスへ結線、LEDのマイナスは3PDTスイッチの2番(ON時のGND。LED切り替え用。)へ結線します。LEDは下に抜けてこないようにホットボンドで固定します。

 

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⑩3PDTスイッチの7番(OFF時のIN)と9番(OFF時のOUT)を結線します。これでスイッチOFF時にTrueBypassされます。

 

⑪最後に、1番(基板IN)と8番(OFF時のGND)を結線します。これはスイッチOFF時に基板INをGNDへ落とすことでポップノイズを防ぐためです。

----- ↑↑↑追加作業ここまで↑↑↑ -----

 


ハンダ取り・ハンダづけ作業のちょっとした注意点と言うかコツです。

 

基板のハンダを除去して新たに配線する際ですが、そのままハンダごてで温めても中々溶けない(吸い取り線が吸ってくれない)場合がよくあります。

 

抵抗ならまだしも、オペアンプダイオードなどは熱に弱いので温めすぎると熱で壊れてしまいます。

 

私がよくやるのは、除去したい箇所に敢えてハンダを盛ってから吸い取り線で吸い取るとキレイに短時間で除去できます。

 

例えば、①の基板の電源プラス箇所のハンダを除去してもう1本追加するところですが、最初はこんな状態になっています。

 

f:id:lenheyvan:20210806165511j:plain

 

 

ここにハンダを盛ります。

f:id:lenheyvan:20210806165530j:plain

 

 

そして吸い取り線で吸い取ると、こんな感じにキレイに除去できます。

f:id:lenheyvan:20210806165807j:plain

 

 

 

あとは普通にハンダづけすればOKです。

 

あと、ハンダづけするときに本来の使い方ではないですがヒートクリップが意外と役立ちます。

 

こんな感じで固定してハンダづけすると両手が使えて楽ちんだし確実に取り付けできます。

f:id:lenheyvan:20210806165836j:plain

 

最後に


これで完成です。

 

組み上げるとときに気づいたのですが、基板に半固定抵抗(トリマー)がついていました。

 

左に回すとシュワシュワが弱くなり、右に回すとやっぱりシュワシュワが弱くなり、デフォルトのセンターが一番シュワシュワが強めです。なんじゃこりゃ・・・

よく分からんけど、センターが一番好みだったのでデフォルトの状態に戻しました。

 

何を調整する抵抗か分かりませんが、自分が一番気持ち良いところがセンターだったのでこれでOKです。

音出しして問題ないことを確認。

f:id:lenheyvan:20210806170011j:plain

 

現行版とモディファイ復刻版の2ショット写真です。

f:id:lenheyvan:20210806165909j:plain


 

復刻版の筆記体ロゴが好きです。

 

LEDはもう少し右隅に寄せても良かったかも知れませんが、やり過ぎるとネジを回せなくなるので、これで良しとします。

 

このモディファイはPhase90以外にも適用できると思います。

 


ではまた!

 

 

【耳で比較してみよう】歪み系エフェクターの昇圧は有りか?無しか?

どうも、lenheyvanです。

 

「耳で比較してみよう」企画の記念すべき第1回目です。


今回は前々から一度やってみたかったエフェクターへの昇圧回路の組み込みをやってみます。

 

主観だけ書いてもイマイチ説得感が出ないので、音源を用意しました。

みなさんの耳で比較してみてください。

 

他の「耳で比較してみよう」シリーズ記事はこちら↓↓↓

 

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でも、ただ組み込むだけだと昇圧による効果がよく分からないので、トグルスイッチで切り替えできるようにしてサウンド比較したいと思います。

 

昇圧回路の作製

昇圧回路自体は割と簡単で、ネットで色々な方の作成例を参考にさせて頂いて、最終的にはCRAFTS MANさんのサイトを参考にこんな感じで作ってみました。

f:id:lenheyvan:20210429222853j:plain

一番右のダイオードは本当はショットキーバイアダイオードが良いのですが(なので”ショットキー”と手書きしてますが)、手持ちが無かったので1N4001で代用しました。

 

切り替え速度が遅いので、スイッチでパチっと切り替えても昇圧まで若干タイムラグがありますが、今回はお試し実験なので気にしません。

 

あと、IC(チャージポンプ)は型番書き忘れてますが、TC1044SCPAを採用しています。

MAX1044PAだと耐圧が危なかしい(耐圧10.5v)、LT1054CPは高い(耐圧18v)、ということで、割とお手頃価格で購入できて必要十分な耐圧であるTC1044SCPA(耐圧13v)にしました。

 

完成した回路はこんな感じです。

これをトグルスイッチに取り付けました。

 

f:id:lenheyvan:20210429225311j:plain

 

今回のテスト機

今回テスト機として使ったのが、以前の記事で紹介したこちらです。

  

lenheyvan.hateblo.jp

 

 

上部のスイッチが、以前はクリッピング有無を切り替えるようになっていたのですが、これを取っ払いクリッピング無し(いわゆるダンブルモード)にして、スイッチ左が9v、右が17vにしました。

f:id:lenheyvan:20210429230410j:plain

  

余談ですが、何年か振りに基板を見てみたら、まあ配線が汚いこと。

恥ずかしくて他人に見せられません・・・

まだ自作はじめて数ヶ月の頃だったので、継ぎ接ぎだらけでした。

 

ちょっといじったらすぐに音が出なくなって、直ったと思ったらまたすぐ出なくなって、の繰り返しでイライラしていたのを思い出しました 笑

 

サウンド比較

違いが分かりやすいと思いますので、是非、ヘッドフォン・イヤホンでお聴きください。耳を痛めない程度に、少し大きめの音で聴いていただいたほうが良いと思います。

 

自分の記録も兼ねてハイゲインからローゲインまで6本録ってみました。

 

ではいってみましょう!

 

 

サウンドCLIP① Unchained-Intro

9V

 

  ※再生できない場合はこちらから。

 

17v

 

  ※再生できない場合はこちらから。

 

 

サウンドCLIP② Panama-Intro

9V

  ※再生できない場合はこちらから。

 

17v 

  ※再生できない場合はこちらから。

 

 

サウンドCLIP③ Panama-Bridge

9V

  ※再生できない場合はこちらから。

 

17V

  ※再生できない場合はこちらから。

 

 

サウンドCLIP④ Cause We've Ended As Lovers-Intro

9V

  ※再生できない場合はこちらから。

 

17V

  ※再生できない場合はこちらから。

 

 

サウンドCLIP⑤ Cause We've Ended As Lovers-Bridge

9V

  ※再生できない場合はこちらから。

 

17V

  ※再生できない場合はこちらから。

 

 

 

インプレッション

みなさんはどう感じられましたでしょうか?

 

劇的に変わる、というわけではないので音源なので伝わりづらいかも知れませんが、実際に弾いていると違いは結構感じました。

 

昇圧により変化は私はこう感じました。

  • ダイナミックレンジが広くなった
  • コンプ感が弱くなった
  • 大人しいサウンドになった(派手さが弱まった)
  • ハリ・艶感の変化は若干増した(予想した程ではなかった)

 

嬉しい変化ポイント

まず一番変わったなと思ったのはダイナミックレンジですね。

ハイゲインで弾いていると分かりづらいのですが、ローゲインだと如実に変わります。

 

③の音源のようにボリューム絞って弾くと、9vだとピッキングへの追従が悪く平坦でショボい感じになりがちなのですが、17vだとそこが改善されて立体的な音像に変わります。

 

ローゲインで繊細なプレイをする場合には、かなり良い効果を発揮します。

 

悩ましい変化ポイント

一方、ROCK色が少し落ちる点が歪みエフェクターとしては悩ましいところです。

歪みの派手さが無くなって落ち着いたサウンドになるのとコンプ感が弱くなります。

 

コンプ感がなくなるので、音の前に張り出す感・迫力が少し弱まります。

 

ダイナミックレンジとコンプ感はトレードオフですので、プレイスタイルに合わせて、どっちを取るかになるかと思います。

 

歪みの派手さと言っているのは、ミドル~ハイミッドの盛り上がり部分が少し奥にいく感じなんですよね。それによって、スイッチを変えた瞬間に、派手→大人しいに変わるように感じました。

 

ゲインが落ちているのかなと思いましたが、スイッチを切り替えてもゲイン自体は変わりありませんでした。

 

ダイナミックレンジが広がることで低域と超高域が増えているので、歪みは減っているけど出力されているパワー感は同程度、という感じです。

 

最後に

いかがでしたでしょうか。

 

歪みエフェクター特有のコンプ感+強い歪みでガンガンいきたい方は9vが好みかも知れませんし、繊細なプレイをしたい方には17vが良い選択肢になるかも知れません。

 

もっと昇圧してやると違いがより明確になるかも知れませんね。

 

私の愛器はオリジナルで作製した2段歪み回路のディストーションなのですが、これは、前段が歪みを作る部分(プリ部)、後段が増幅部(パワー部)となっています。

 

ビールが好きなもので、サウンドイメージに合うビールの種類をそのまま命名しました。

  • 炭酸とホップの苦みがガツンと効いているGolden PILSNER
    ※マーシャル系サウンドなので、1959のようなプレキシ系を模したデザインにしています。
  • 炭酸弱めで柔らかく芳醇なBrown ALE
    ※Golden PILSNERより少しFender寄りの味付けにしています。

 

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今回の実験結果から、これのパワー部のみ昇圧しようかと考えています。

 

ガッツリ歪ませたい場合はプリ部を強めにして、繊細なプレイをしたい場合はパワー部を強めにすれば、ジェフベックからホワイトスネイクまでできるのではないかと考えています。(その腕があるかどうかはさておき・・・)



ではまた!



他の「耳で比較してみよう」企画はコチラです。
↓↓↓

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歪みエフェクターのクリッピングダイオードのレビュー

(2022/9/4追記)
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kindleエフェクター自作本を出版しました。

丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編) ~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編) ~配線レイアウトの解説~

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どうも、lenheyvanです。

 

今回はみんな大好きなクリッピングダイオードです。

 

エフェクター自作しているとクリッピングダイオードを色々試したくなりますよね。

私が今まで試したみたダイオードの感想を書いてみようと思います。

 

そもそもクリッピングダイオードって何?という方はこちらをどうぞ。

↓↓↓

 

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今まで試したクリッピングダイオードの所感

ゲルマニウムダイオード

順方向電圧が0.2-0.4vくらいと低いので歪みやすいです。

その分、アウトプットボリュームは小さくなります。

歪みの質としては柔らかい歪み方ですね。古き良き時代の歪み方というか、トゲが無くミドルを気持ちよく歪ませてくれる気がします。

ダイオードは一定電圧(順方向電圧)以上になると電流が流れますが、ゲルマニウムダイオードはその電圧より低くても微量に流れることで、ハードクリッピングではなくソフトクリッピングになると言われています。

 

1N34a
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ケンタウロス で採用されているので有名ですね。

初期MXR Distortion+もこれだったと思います。

 

1N系の中では一番ハイが出るダイオードだと思います。

ピッキングアタック時にキュッという倍音がよく出ます。

粘りよりキレを重視したい方には良い選択肢だと思います。

 

1N60
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ミドル寄りの歪みで、歪の質は粗めです。

 

暖かい感じの柔らかさがあるけど、歪みの粒が粗めなので暴れる特徴ももっており、ブリッジミュートすると気持ちいいです。

 

1N34aほどのキレは無いですが、粘りと太さはこっちのほうがありますね。

個人的にはブラウンサウンド感を感じられ、一番好きなダイオードです。

 

1N270
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こちらもミドル寄りですが、1N60と違うのは歪みの粒です。

こちらは細かめで、上品な歪み方をします。

私の感覚ではSlashの歪みに近い気がします。

 

1N60がワイルドだとすると、こっちはジェントルな感じがします。

コード感もキレイに出るので使いやすいと思います。

粘りは1N34aと1N60の中間くらいでしょうか。

 

シリコンダイオード

順方向電圧は0.4-0.6vでゲルマニウムダイオードの2倍くらいです。

ゲルマニウムダイオードが木材だとすると、こっちは石材ですね。

暖かみは少なく、クールな歪み方をします。

 

1N4001
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まず特筆すべきはミッドローです。

太く重めのサウンドが持ち味のダイオードです。

ロー寄りの歪みが好きな方にはピッタリ、ハイ寄りの歪みが好きな方にはキレが無いと感じると思います。

ギターで言うとレスポールという感じです。

ストラトに合いそう気がします。

 

1N400x系は下1ケタが大きくなるに従ってミッドローが強くなります。

ギターやピックアップがかなりハイ寄りなのであれば、1N4007なんかもアリかも知れません。

 

1N4148
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シリコンダイオードの中ではミドル寄りで暖かみがあります。

(あくまでもシリコンの中ではという意味です)

 

ただ、ゲルマニウムダイオードのように密度の濃いミドルではなく、割と歪みの粒と粒の間にスペースのある歪みなので、クールな感じがします。

 

歪みの粒は粗めなのでワイルド系なのですが、「1N60だとちょっと濃いな~、もうちょっとスッキリ系にしたいんだよなー」という方にはピッタリかと思います。

 

LED

マーシャルのガバナーで有名なLEDです。

クリッピングした時にピカッと光るのが楽しいです。

通常はケースに入れてしまうので見えませんが、穴をあけてこれを見せるようなディストーションを作っている方はたまに見かけます。カッコイイですよね。

 

サウンドについては、シリコンが石材だとすると、こちらは分厚い氷ですね。

ローとハイが良く出るので、ダイオード界のマーシャルです。

ローが出ているので分厚さを感じる一方で、ハイはトゲのある歪み方をするので、ブリッジミュートすると、ザクザクします。倍音も豊富です。

 

LED赤
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赤色が一番順方向電圧が低いと言われています。

とは言っても、1.0vは超えているはずです。

赤で低めのもので1.2-1.5v程度ではないかなと思います。

 

これくらいの順方向電圧だと、ピッキング時に結構明るくピカッと光ります。

これだけ順方向電圧が大きいと、アウトプットボリュームも大きくなりますので、アンプを強くプッシュしたい方には良い選択肢になると思います。

 

クリッピング用は赤の3mm(小さいやつ)を選ぶと良いと思います。

 

LED青など
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青や紫のような寒色系は順方向電圧がかなり高めです。

そのため歪みにくい、良く言えばヘッドルームが大きいのでダイナミクスが出やすいです。

あまり歪ませたくないけど、ノンクリッピング(俗に言うダンブルモード)だと物足りないので、少し味付けしたいという方には良いかも知れません。

 

MOSFET

ちょっと変わり種のMOSFETです。

トランジスタの一種なのでダイオードではないのですが、クリッピングに使える素材なので取り上げてみました。

 

Zendriveで有名ですね。

音色としては一言でいうと、分厚くサウンドです。

人に寄っては暑苦しいと感じる方もいるかも知れません。

コンプ感も強めなので、独特の感触があります。

 

2N7000
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私的にはB'z松本サウンドに感じました。

太くコンプ感が強いサウンドで、音の芯がしっかりしている感じです。

それでいて、ピッキングしたときのニュアンスはちゃんと出ます。

ただ、音の芯がしっかりしているので歪みを上げていっても潰れることはありません。

理性を保ったままHOTになる感じですね。

 

 最後に

歪みエフェクターに一番影響するのはオペアンプクリッピングダイオードだと思ってますが、各製品、色が全然違っていて、すごく面白いです。

ソケット化してしまえばお手軽に試すことができるので、自分の歪みを追及したい方にはすごく楽しい作業かと思います。

 

オペアンプ沼、クリッピング沼にみなさんハマってみなされ!

 

オペアンプの記事はこちらです。

↓↓↓

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そして、エフェクターではなくアンプで歪みサウンドを確立したい方はコチラが参考になると思います。

↓↓↓

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超初心者向け徹底解説 〜【配線編】トゥルーバイパス仕様のMXR Distortion+

(2022/9/4追記)
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kindleエフェクター自作本を出版しました。

丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編) ~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編) ~配線レイアウトの解説~

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どうも、lenheyvanです。

 

電子回路編に引き続き、配線編になります。

 

私はエフェクターを作るときに、回路設計したら、全体の配線図を書いてます。

エフェクターケース裏側方向から見た絵になります。

 

例えば、トゥルーバイパス仕様のMXR Distortion+だと次のような感じになります。

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作るときに間違えると基板が汚くなってしまいますし(何より心が折れます)、基板の部品数が多い場合などは効率良くスペースを活用しないといざ組み込むときに入らなかったりしますし、急がば回れではないですが、事前に配線図を書いてから作業に取り掛かったほうが良いと思います。

 

基板部は電子回路編で解説していた回路図と同じですので、こちらも合わせてみて頂けると分かりやすいと思います。

 

lenheyvan.hateblo.jp

 

全体概要の解説

おおまかな全体の流れは次のとおりとなります。

・3PDTスイッチがOFFの場合、バイパスされます。

 信号は、入力ジャック→3PDTスイッチ→出力ジャックと流れます。

・3PDTスイッチがONの場合、基板を通った信号が出力が出力されます。

 信号は、入力ジャック→3PDTスイッチ→基板→出力ジャックと流れます。

 

では次はトゥルーバイパス配線の仕組みについて説明します。

 

トゥルーバイパス配線

配線の仕方は今回説明する配線とは違うやり方もありますので、一例と捉えてもらえればと思います。

 

3PDTスイッチの仕組みから説明しますが、全部で9ピンあります。

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出展:Garrettaudio

 

次の絵のようにスイッチを踏むたびに接続が変わり、上半分が縦に導通⇔下半分が縦に導通が切り替わります。

 

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これを踏まえて、 私は次のように配線しています。

赤字が信号の流れです。

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左:エフェクトOFF(バイパス)

INから入ってきた信号は、下段の左→右ピンの結線を通ってOUTへ抜けていきます。

 

このとき、基板IN・OUTは通っていませんのでエフェクトはかかりません。

また、上段中央ピンのLEDマイナスはGNDへ落ちていませんので、LEDに電圧はかかりません。そのためLEDはOFFになります。(LEDプラス側は常に9V電源に接続されています。マイナス側をGNDへ落とす/落とさないでON/OFFを切り替える仕組みです)

 

上段左ピンから下段中央ピンへ結線されていますが、これはポップノイズを防ぐためのものです。これが無いと、3PDTスイッチ切り替え時にボッというノイズが出る場合があります。バイパス時に基板INはGNDへ落としておくことでこれを防いでいます。

 

右:エフェクトON(基板を通す)

INから入ってきた信号は、上段左ピンから基板へ流れます。

基板と通ってエフェクトされた信号が上段右ピンから戻ってきますので、これが中段右ピンへ流れて、OUTへ抜けていきます。

 

LEDマイナスは上段中央ピンから中段中央ピンに接続されますのでGNDへ落ちます。

そのため電圧がかかりLEDはONになります。

 

配線の仕方は今回説明した配線方法ではないのですが、私は、この配線方法が分かりやすくて好きです。(左半分がIN、中央がGND、右半分がOUT)

 

以前、基板INと基板OUTの線の距離が近い配線で作ったときに、クロストーク(近接しているケーブルを流れている信号が干渉してしまう現象)が発生してしまいノイズが酷いことになったことがあります。そのときに、配線を見直しして、隣り合わせにならないようにこの配線方法を採用することにしました。

 

入力ジャック・出力ジャックの配線

エフェクターで使われるのは1/4フォンコネクタというものです。

SwitchCraft製のものが品質的には評価されています。が、少し高いです。

 

ギターでも例えばレスポールタイプのトグルスイッチ(ピックアップセレクタースイッチ)なんかはSwitchCraft製が人気ありますね。

ちょっと高いですが、私もレスポールやWashburnN2・N4のスイッチは、SwitchCraft製にしています。ノブをクローズにすると渋くてカッコイイです。

(注)インチサイズとミリサイズの2種類あるので要注意です。国産のトグルスイッチはミリサイズですが、SwitchCraftはインチサイズだったはずです。ノブがミリサイズだと合わないです。(一回やりました・・・)

 

 

 

話は戻りますが、1/4フォンコネクタには種類があって、オープンタイプ/ボックスタイプ、モノラルタイプ/ステレオタイプがあります。

 

まず、オープンタイプですが、こんな形をしています。

 

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出展:Garrettaudio

 

一方、ボックスタイプはこんな形をしています。

f:id:lenheyvan:20210418163051j:plain

出展:Garrettaudio

 

どちらもお目にかかったことはある方は多いのではないでしょうか。

どちらにするかは好みで決めれば良いと思います。

 

私は意図しない導通が起きてしまうことに気を遣うのがイヤなのでボックス型をいつも使ってます。(配線の仕方が上手だったらそもそもそんなリスクは無いんでしょうけど・・・)

 

 

 

次にモノラル/ステレオですが、よく見てください。

ピンの数が違います。1本多いですよね。

 

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出展:Garrettaudio

 

 

何が1本多いかと言うと、シールドケーブルが挿入されたときだけGNDが有効になる端子です。

 

モノラルジャックはプラス端子とマイナス端子(GND)があります。

ステレオジャックはこれに「シールドケーブルが挿入されたときだけGND」端子を追加したものです。

 

入力側はステレオを使うことで、ジャック挿入したときにだけ電源がONになる仕組みを実現しています。

 

これがモノラルだと、ずっと電源ジャックが接続された状態になるので、エフェクターをOFFにしている間もずっと通電状態になってしまいます。

DCジャックならまだいいですが、電池だと困りますよね。

 

対して、出力側はこういう制御が不要なのでモノラルジャックで良いです。

ステレオジャックでも良いのですが、使わない端子があっても邪魔なだけなのと、ステレオのほうが若干価格が高いので、メリットはありません。

 

それがこの部分です。

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INのGNDと書いている端子が「シールドケーブルが挿入されたときだけGND」端子です。これを電源ジャックのマイナス端子と接続しています。

 

INのマイナス端子ではなく「シールドケーブルが挿入されたときだけGND」端子と接続しているのがミソで、こうすることでシールドケーブルを挿入しているときだけ電源ジャックのマイナス端子がGNDへ落ちて、電圧がかかります。

 

LEDのON/OFFの仕掛けと同じですね。

 

INのマイナス端子へ接続しても問題はないですが、エフェクトOFF時も常に電力を消費することになります。

 

 

 

ポット(可変抵抗)の配線

可変抵抗ですが、今回は2つとも、左に回し切ると抵抗がMAXにかかる状態、右に回し切るとGNDに落ちるようにしたいので、端子aに結線します。

残り2つの端子はポットの背中にハンダつけしますが、ポット自体がケースと導通しているのでGNDに落としていることになります。

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 可変抵抗はどこに何を結線そればいいんだっけ?となってしまいがちですが、左に回していくと中央の端子が右の端子とショート(抵抗値MAX)、右に回していくと左の端子へショート(抵抗値ゼロ)という感じで覚えておくと良いと思います。

(裏から見ているのでノブを回す方向と、ショートする端子が逆方向になります)

 

ギターの配線だと、右の端子がGND(ピックアップのコールド)、中央の端子がアウトプット、左の端子がインプット(ピックアップのホット)になりますよね。

 

左へ回していくと右の端子に近づいていくので、抵抗が減少していき信号がどんどんGNDへ落ちていきます。(ボリュームが小さくなっていく)

 

反対に、右へ回していくと左の端子に近づいていくので、抵抗が増大していきGNDへ落ちる信号が少なくなっていきます(ボリュームが大きくなっていく)

 

ただ、右へ回し切っても、ピックアップ(HOT)は可変抵抗と通じてGNDへ繋がっているため、微量ながらGNDへ信号が落ちています。

可変抵抗は抵抗を大きくすればするほど高域寄りになっていくことはよく知られていますが(通常ハムバッカーだと500Kですがテレキャスだと1Mがつけられたりしますよね)、1Mでも微妙はGNDへ落ちていることで、若干ハイ落ちしています。

 

これをポジティブに太さと捉えるのか、ネガティブにハイ落ちと捉えるのかは人に寄って違うと思います。

 

これをハイ落ちと捉える人向けにSONICというメーカーからフルアップボリュームなるものが出ています。

 

この製品は、2連可変抵抗を使って、ボリュームMAXの場合に抵抗と接続しないようにすることで、ピックアップが出力している高域を全てアウトプットできるようになっています。

 

これについてはこちらの記事で紹介していますので気になる方はご参照ください。

↓↓↓

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ではまた!

 

 

 

オペアンプのサウンドレビュー ~デュアル編~

(2022/9/4追記)
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kindleエフェクター自作本を出版しました。

丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編) ~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編) ~配線レイアウトの解説~

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どうもlenheyvanです。

 

前回はシングルオペアンプのレビューをしましたが、今日はデュアルオペアンプのレビューです。

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lenheyvan.hateblo.jp

 

MXR Distortion+に載せての評価です。

自作ソケットを使ってデュアルをシングルへ変換して載せてます。

 

感じ方は人に寄りけりなので、あくまで個人的な主観としてお読みください。

 

JRC4558DD

[総評]
よく目にするオペアンプ。薄膜がかかったような感じでモコモコする。キレはあまり無い。歪みは弱め。ごく普通のオペアンプという感じ。自分のエフェクターには採用しないと思う。


・歪みの深さ:少し弱め
・歪みの粒感:少し細かい
・音質   :ミドル寄りでモコモコ系

・レンジ  :狭い
倍音   :普通
・ノイズ  :少し多い

 

RC4558P

[総評]
優等生タイプ。4558系の中ではノイズは少ない方。 RC4558DDを力強くしてノイズを消した感じ。ハイミッドの倍音が出るのでウェットな印象。ただ、 ゲイン落とすと、若干ショボくなるのが残念。

 

[項目別評価]
・歪みの深さ:深い
・歪みの粒感:細かい
・音質傾向 :ハイミッド寄りでウェット

・レンジ  :普通
倍音   :少し強め
・ノイズ  :少ない

 

RC4559P

[総評]
4558系ではカラッとした乾いた音で気持ちいい。ゲインを落としてもショボくならないのがGood。コスト抑えつつ音質も妥協しないなら最良の選択肢になる。


・歪みの深さ:深い
・歪みの粒感:細かめ
・音質傾向 :ドライ。カラッとしている。

・レンジ  :普通
倍音   :ハイミッドが良く出る
・ノイズ  :少ない

TL4558P

[総評]

4558系の中では一番粗め。ノイズは少ない。 歪みは強くはない。粗めでワイルドな歪みが好きならお勧めできる。ただ、ゲイン落とすと若干ショボくなるのが残念。


・歪みの深さ:普通
・歪みの粒感:少し粗め
・音質   :ドライとウェットの中間

・レンジ  :普通
倍音   :普通
・ノイズ  :少ない

 

NJM4558DD 艶あり

[総評]

4558系の中では一番細かく深い歪み。ミドルが出過ぎてないので、レンジが広く聴こえ、コード感が聴き取りやすい。全体的にカラッとした気持ちの良いサウンド。人気があるのは納得。


・歪みの深さ:深い
・歪みの粒感:細かい
・音質傾向 :ドライ

・レンジ  :少し広め
倍音   :ミドルからハイまで良く出る
・ノイズ  :少ない

 

RC4558 MALAYSIA

[総評]

価格的には4558系で最高峰だが納得のサウンド。まず第一印象は太い。深い歪み、ノイズの少なさ、ワイルドでミドル強めでロック色が強い。太くよく歪むサウンドが好きな人にはピッタリ。ミドルが暑苦しいのが苦手な人は艶ありをお薦めする。


・歪みの深さ:深い
・歪みの粒感:少し粗め
・音質傾向 :ミドル強めで太い

・レンジ  :少し狭め
倍音   :ハイミッドが良く出る
・ノイズ  :少ない

 

TL072CP

[総評]

倍音が良く出て元気なサウンド。歪み過ぎず、レンジも狭過ぎず広過ぎず、バランスが良いサウンドピッキング時のキャッというハーモニクスはduncan JBぽい。優等生タイプなので人によっては物足りなく感じるかも知れない。


・歪みの深さ:少し強め
・歪みの粒感:普通
・音質傾向 :ドライとウェットの中間

・レンジ  :普通
倍音   :強い
・ノイズ  :少し少なめ

 

TL082CP

[総評]

元気はあまりなく、倍音も少なめで、歪みも弱め。ピックアップで言うとduncan antiquityのような枯れた感じ。兄弟分のTL072CPとは全然違うキャラクター。おとなしいお兄ちゃんという感じ。


・歪みの深さ:弱い
・歪みの粒感:少し粗め
・音質傾向 :実音強め

・レンジ  :普通
倍音   :弱い
・ノイズ  :少し少なめ

 

LT1498

[総評]

一言でいうとハイファイでキレイ。アンプで言うと、ヒュース&ケトナー、ピックアップで言うとEMG。クリーミーかつパワーのある音で、ノイズの少なさは今まで試した中でイチバン。クセの無いサウンドなので人によっては無機質、物足りないと感じるかも知れない。


・歪みの深さ:押し出し(パワー感)が強い
・歪みの粒感:クリーミー
・音質傾向 :サラッとしてクセが無くハイファイ

・レンジ  :広い
倍音   :実音と一緒によく出る感じ
・ノイズ  :かなり少ない

 

LME49860NA

[総評]

粗めでハイファイ。741系をハイファイにしてレンジを広くした感じ。ノイズも少なく優等生なサウンドなのに、粗くワイルドな味付けなところが面白い。実際のパワー感は強めだと思うが、ローがあまり強くはないのでそこまで押し出し感はない。


・歪みの深さ:深い
・歪みの粒感:粗い
・音質傾向 :ドライ寄りでハイファイ

・レンジ  :少し広め
倍音   :普通
・ノイズ  :かなり少ない

 

OPA2604AP

OPA2132PA

 前回のシングル編を参照。

 

最後に

いかがでしたでしょうか?

 

4558系だと私は艶ありが一番好みでした。

ハイファイ系だとLME49860NAです。

 

マレーシア製の4558は私には少し暑苦しく感じて、艶ありくらいのカラッとした感じが好きです。

 

また、シングルも含め、色々試してレビューできるものが増えたら、追記してアップします。

 

 

また、クリッピングダイオードの所感についてはこちらになります。

こちらも合わせてご覧ください。

↓↓↓

 

lenheyvan.hateblo.jp

 

 

また、9v電源を18v昇圧することで、サウンドがどう変わるかはコチラをご参照ください。(音源あり)

↓↓↓

 

lenheyvan.hateblo.jp

 

 

オペアンプのサウンドレビュー ~シングル編~

(2022/9/4追記)
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kindleエフェクター自作本を出版しました。

丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編) ~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編) ~配線レイアウトの解説~

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どうもlenheyvanです。

 

今日はシングルオペアンプを今まで色々試してきたので、音質評価を整理したいと思います。

 

f:id:lenheyvan:20220312120312j:plain

 

MXR Distortion+に載せての評価です。

 

感じ方は人に寄りけりなので、あくまで個人的な主観としてお読みください。

 

LM741CN

[総評]
ロウファイ。質感は良いが、パワー感は弱め。ハイミッドのきらびやかさは無い。

 

[項目別評価]
・歪みの深さ :若干弱め
・歪みの粒感 :粗い
・音質傾向  :高音弱め
倍音    :普通
・ノイズ   :普通

 

UA741CN

[総評]
ロウファイ。ドライで粗めの質感。もうちょいパワー感は欲しいところ。
きらびやかさは良いがUA741CPには一歩譲る。

 

[項目別評価]

・歪みの深さ :普通
・歪みの粒感 :粗い
・音質    :ミドルのおいしい部分がキレイ出る
倍音    :ハイミッドが良く出る
・ノイズ   :普通

 

UA741CP

[総評]
ロウファイ。ドライで粗めの質感に、パワー感もあって、高音のきらびやかさも良い。

 

[項目別評価]
・歪みの深さ :少し深い
・歪みの粒感 :粗い
・音質    :おいしい部分キレイ出る
倍音    :ハイミッドが良く出る
・ノイズ   :普通

UA741CP MALAYSIA

[総評]
UA741CPをさらにパワー感を加えた感じ。それ以外の特性は同じ。
741系の中では一番好きな感じ。 

 

[項目別評価]
・歪みの深さ :少し深い
・歪みの粒感 :粗い
・音質    :おいしい部分キレイ出る
倍音    :ハイミッドが良く出る
・ノイズ   :普通

 

LM308AN

[総評]

RATで有名過ぎるオペアンプ。低音が強めで高音が弱め。そのため、色気は無い。
一方、パワー感はすごい。RATに搭載されてるだけあって、メタル系なオペアンプ
きらびやかさはシングルタイプでは一番無い。

 

[項目別評価]

・歪みの深さ :深い
・歪みの粒感 :普通
・音質    :低音強め、高音弱め
倍音    :普通
・ノイズ   :普通

 

OPA604AP

[総評]
高級オーディオに使われるだけあってハイファイ。ノイズは少ない。ドライブ感は強い。
中域に盛り上がりがあり、ハイファイながらも温かみがある。上品な印象。

 

[項目別評価]
・歪みの深さ :少し深い
・歪みの粒感 :普通
・音質    :レンジ広め。中域に盛り上がりがある。
倍音    :普通
・ノイズ   :少ない

 

OPA134PA

[総評]
OPA604APの兄弟機。同じくハイファイでノイズ少な目でドライブ感は強い。
歪みは細かめで全帯域に渡ってレンジが広い。高音域が強く金属的な響きがある。HR/HM向き。ダグアルドリッヂのような音。

 

[項目別評価]
・歪みの深さ :深い
・歪みの粒感 :細かい
・音質    :レンジ広く、ドンシャリ系。
倍音    :普通
・ノイズ   :少ない

 

2021/4/11追記

NE5334P

[総評]
良くも悪くも個性やクセはあまり無く、ハイファイと言われつつも、ハイファイ過ぎない。

面白みがあると言われると面白みは無いが、クセの強いオペアンプをもっと素直なサウンドにしたいならあり。オペアンプで積極的に音作りしていく人には向かない気がする。

 

[項目別評価]
・歪みの深さ :普通
・歪みの粒感 :普通
・音質    :フラット
倍音    :普通
・ノイズ   :普通

 

OPA627AP

[総評]

ポタアンなどのオーディオ界隈ではかなり高評価の2,500円ほどする高級オペアンプ

Burr-Brown社に共通するハイファイさは素晴らしい。

ただ、エフェクターではどうかと言うと、全帯域強すぎて、ローはドンドン、ミドルはモコモコ、ハイはキンキン。オーディオなら、迫力と明瞭さが良い方向に行くと思うが、こと、エフェクターとなると合わないのが面白いところ。エレキギターはミドルが大事な楽器なので、そこがフィットしないと思われる。

 

[項目別評価]
・歪みの深さ :普通
・歪みの粒感 :普通
・音質    :ドンドン、モコモコ、キンキン
倍音    :普通
・ノイズ   :少ない

 

UA741HC メタルカン

[総評]
希少なメタルカンのUA741。良くメタルカンは安定していると聞くので、クリアでハイファイな音を予想していたが、通常版と同じくローファイ。

タルカンのほうが古いせいか若干、泥臭い感じ。

このダーティさはハマる人はハマると思う。

ハイファイで分離感を求める人には向かない。

 

[項目別評価]
・歪みの深さ :普通
・歪みの粒感 :粗い
・音質    :ローミッドが強めでダーティ
倍音    :少し少ない
・ノイズ   :少し多い

 

最後に

いかがでしたでしょうか?

オペアンプで音質はかなり変わります。

 

741系は総じてローファイですが、これにしか出せない、良い意味で古臭いサウンドがあります。

立ち上がりが遅いので、その分粘りを感じるように思えます。

レンジは狭めでローとハイは強くなく、ミッドが強調されます。

 

一方、OPA系はBurr-Brown社製ですが、ハイファイでキレイな歪み方をします。

OPA604APが暖系だとすると、OPA134PAは寒系です。

 

これ以外にも沢山ありますので、オペアンプはソケット式にして、色々載せ替えてサウンドの違いを楽しむと良いと思います。

 

次回はデュアル編にいきます。

 ↓↓↓

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また、クリッピングダイオードの所感についてはこちらになります。

こちらも合わせてご覧ください。

↓↓↓

 

lenheyvan.hateblo.jp

 

 

超初心者向け徹底解説 〜【電子回路編(4/4)】distortion+の回路図解説「④クリッピング部」〜

(2022/9/4追記)

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丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。


世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編)
~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編)
~配線レイアウトの解説~


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どうも、lenheyvan です。

前回は「③電源部」をやりました。
lenheyvan.hateblo.jp


今回は、「④クリッピング部」をやりたいと思います。

電子回路編の最終回です。

いつものように、こらを別タブで開いてください。この図を見ながら読んでもらえると理解しやすいと思います。

この部分は一番モディファイで楽しめる、自分のオリジナリティを出せるところかも知れません。

どんな質感の歪みにするのか、歪みはグシャとするのかナチュラルにいくのか、ハイ寄りかミドル寄りか、アウトプットボリュームはどの程度にするのか、ハーモニクス多めか実音強めか、etc...

では、いってみましょう!

「④クリッピング部」の解説

直流成分を除去(C5)

これは「カップリングコンデンサ」というやつです。

回路間を繋げるときに直流成分を除去することで信号を扱いやすくしています。
カップリングという名前の通り「組み合わせる」ということですね。

入力部で、オペアンプを動作させるために4.5vのバイアス電圧をかけたと思いますが、これを除去してあげるようなイメージで捉えてもらえれば良いです。

ここは容量によって除去する周波数帯域を変わるところなので、敢えて狭めたり広げたりすることで、積極的に音作りに利用することができます。
それは後述のモディファイネタ帳にて。

オペアンプを保護(R8)

入力部のR1でオペアンプ保護を行っているとご説明しましたが、こちらは出力部のオペアンプ保護です。
R1同様にお作法としてつけておく、という理解で良いと思います。

クリッピング(D1,D2)

さて、今回の肝であるクリッピング部です。

これは前回の電源部で少し触れましたが、波形の頭を潰す(切り取る)と音が歪むと言いましたが、
まさにそれを行う部分になります。


では、クリッピングの仕組みの説明にいきましょう。
まず、D1,D2はダイオードです。

ダイオードは一定電圧以上になってはじめて電流を流すという特性があります。

電流を水に置き換えると、土嚢を置いて水の流れを堰き止めている状況をイメージしてみてください。
こんな感じです。

水の流れ=電流、土嚢=ダイオード です。

水の勢いが弱いときには土嚢に阻まれて水は流れません。
つまり、電流は流れないわけです。

しかし、水の勢いが強くなってくると土嚢を乗り越えて水が流れます。

土嚢を乗り越えた部分は水の勢いが強く(=電圧が高い)、
土嚢を乗り越えられていない部分は水の勢いが弱い(=電圧が低い)、と思ってください。

土嚢=ダイオードと説明しましたが、土嚢の高さ=ダイオードの順方向電圧 と言います。

順方向電圧とは、これ以上の電圧になると電流が流れちゃうよ、という閾値のことです。


では、ちょっと回路図に戻ってみましょう。

D1,D2の先はGNDに繋がってますよね。
ということは、D1,D2を通過した電流は捨てられるわけです。

D1,D2を通過する電流とは何でしょうか?

そうです!

土嚢の高さを超えた水、つまり、順方向電圧を超えた電流です。

例えば、このdistortion+で使わている1N60(初期は1N34aかな?)はゲルマニウムダイオードという種類のダイオードですが、順方向電圧は低めで0.2v程度です。
そのため、オペアンプから出力された信号の内、0.2vを超えた信号のみダイオードを通過してGNDへ捨てられます。

その結果、こういう波形になります。

こうすることで、歪みを生み出しているわけです。

高周波ノイズを除去(R8,C6)

ここでもR8が出てきますが、はい、ご推察のとおり、ここはR8とC6でローパスフィルターを形成しています。

例のごとくElectricdocで計算してみるとこの通り。
超高域の15.9kHz以上をフィルタリングしています。これによって、高周波ノイズを除去しています。

出力ボリュームを調整(R9)

最後のR9は可変抵抗になっており、OUTPUTノブにあたります。

ここは単純で、OUTPUTをMAX(右に回し切る)にすると0Ωになるようになっており、信号がそのまま出力されます。
MIN(左に回し切る)にするとGNDに直結され、信号は全てGNDに落ちます。よって、音が出なくなります。
中間くらいだと、半分捨てて、半分出力という感じです。

ギターのボリューム回路と同じですね。

モディファイのネタ帳

音を太くする/シャープにする(C5)

ここはカップリングコンデンサと説明しましたが、コンデンサなので容量を大きくすると通過する周波数帯域が低域方向に広がります。
逆に容量を小さくすると狭まります。

サウンドへの影響としては、容量が大きいと低音が強くなり太くなります。
容量が小さいと、切れの良いサウンドになります。

ただ、どちらもやり過ぎは良くなくて、大き過ぎると重くもたつくサウンドになりますし、
小さ過ぎると細くてショボイサウンドになります。

個人的にはデフォルトの0.5~1.5uFくらいが良いバランスだと思います。

クリッピングの効きを調整(R8)

オペアンプの保護の役目もありますが、実はこれクリッピングの効きに影響します。

抵抗値を小さくすると、勢いよくOUTPUTへ向かって出力されていくのでスッキリしたサウンドになりますが、クリッピングがあまり効かなくなります。

D1,D2へかかる電圧が弱くなりクリッピングされなくなるんですね。
(勢いが良すぎるためD1,D2に流れず、真っすぐOUTPUTへ行っちゃう感じですね)

逆に抵抗値を大きくすると、入力部のR1と同じように若干泥臭さが出てきます。
(良い悪いではなく。それを良しとするかどうかは自分の耳で判断です。)

10kくらいだとしっかりクリッピングもされますね。

色々試してみましたが、100kくらいにしてもクリッピング感(歪み感)は変わらずに
泥臭さが強くなったので、しっかりクリッピングさせるためには10kあれば十分でしょう。

歪みの質感を変える(D1,D2)

ここは一番お手軽に、かつ、音色を変えることができるので楽しいところです。

デフォルトではゲルマニウムダイオードと説明しましたが、これは割と粗めで、かつ、暖かいサウンドです。
バリバリと歪むけど耳に痛い成分はそこまで出ない
、という感じでしょうか。

順方向電圧はかなり小さく0.2vなので、0.2v以上は捨てられます。
これがdistorton+の出力が低めである所以ですね。

例えばここをLEDに変えると、順方向電圧は2.0~3.5vになります。(種類によって異なります。赤は低め、青・白は高めです)
そうするとアウトプットされるボリュームが大きくなります。これは劇的に違いますね。

また、LEDは割と冷たい感じのザクザクしたマーシャル風の歪み方になります。
これはダイオードの特性によるものです。

順方向電圧を超えると電流が流れます、という説明をしましたが、実際は超える前にも少しチョロチョロ流れています。

LEDだと順方向電圧を超えるまではほぼ流れず、超えた瞬間一気に流れます。そのため波形は鋭くなります。
一方、ゲルマニウムダイオード順方向電圧に達していなくてもチョロチョロ流れるので、波形は緩やかになります。

このようにダイオードにも種類が色々あって、紹介したゲルマニウムダイオード、LEDのほかにも、
シリコンダイオード、ツェナーダイオード、などあり、それぞれ歪み方、太さなど色々なファクターが違います。


もう1つ説明しておくべきことがあって、それは対称クリッピングか非対称クリッピングかです。

デフォルトでは1N60の対称クリッピングになっています。
何が対称かと言うと、順方向電圧です。順方向電圧が同じということは交流成分のプラス側もマイナス側も同じようにクリッピングすることになります。
一方非対称ではクリッピングでプラス側とマイナス側で文字通り非対称になります。


対称クリッピングだと、奇数次倍音が多く、偶数次倍音は少ないです。

奇数次倍音が多いとおとなめで音の輪郭がハッキリしたサウンドになります。
実音をベースに置いた男らしいストレートサウンドです。

一方、偶数次倍音が多いと派手でキラキラしたサウンドになります。
実音よりもハーモニクスが目立ち、ピッキングしたときのアタック感なんかも強くなります。
また、ダイナミックレンジが広くなるのでボリュームも大きくなります。

デフォルトは1N60を2つ使った対称クリッピングですが、片側を2つにして、非対称クリッピングにするだけでもサウンドが大きく変わります。

また、大胆にこのD1,D2を外してしまうという選択肢もあります。
これは俗に言うダンブルモードというものです。
この場合、クリッピングしないので、アウトプットボリュームは最大限に大きくすることができます。

スイッチでクリッピング有無を切り替える改造なんかも良くありますね(ディストーションモード⇔ダンブルモード)

ただ、クリッピングしないと言っても、実際はオペアンプ側で多少頭打ちになるのでそこでソフトにクリッピングはされます。

音色の硬さを調整(C6)

デフォルトでは15.9kHz以上をフィルタリングしていますが、これを取っ払うと、もっと固めのサウンドになります。

MXR初期のビンテージ物を持っていますが、現行品より硬めでクッキリしたサウンドなので、取っ払うと近づけるかも知れません。
ただ、その分ノイズも少し多めになると思います。
現行品に近づけるという意味では、信号ラインのコンデンサをフィルムコンデンサではなくセラミックコンデンサを多用するのもアリだと思います。

逆に容量を大きめにすると角の取れたマイルドなサウンドになります。
やり過ぎるとモコモコしてキレの無いサウンドになってしまいますが、0.05uFくらいまでは使えるサウンドです。(このときのカットオフ周波数は約3kHzです)
下げれば下げるほどノイズは減ります。

モタつきを改善

これは回路の追加になりますが、お勧めのモディファイです。

以下を赤丸部分を追加します。

C5とR10でハイパスフィルター形成していて、通過した低音域をGNDへ捨てています。

ただ、やり過ぎると、低音がスカスカになってしまいます。
上の図では159Hz以下をカットしています。

エディのブラウンサウンドって低音は出過ぎてないんですが、100-200Hz辺りをカットするとかなり近づきます。
こうすることでミッドをしっかり歪ませることができるんですね。

最後に

これで電子回路編は最終回です。

ここまで読んだあなたはもう自分でモディファイすることができるようになっているはずです。

各パーツの意味、仕組みをもう理解していますからね。

distortion+好きなんだけど、もうちょっと太さが欲しい、ノイズを減らしたい、アウトプットボリュームを大きくしたい。
これに対してどうアプローチすれば良いかはもう分かったと思いますので、是非、色々試して楽しんで欲しいと思います。
※自己責任でお願いいたします。m(_ _)m

また、distortion+に限らず、非反転入力回路を使ったディストーションエフェクターはこの知識が適用できると思います。

みなさんの求める歪みサウンドの追及に少しでも役に立てていたら嬉しいです。



ただこれで終わりではありません。

オリジナルのエフェクターを自作したいけれども、
 ・ケース加工ってどうやるの?
 ・ケースにオリジナルのデザインしたいんだけど
 ・ケースの上にアクリル板載せてカッコよく作りたい
 ・トゥルーバイパスの配線分からないんだけど
 ・スイッチ使って音色の切り替えしたいんだけど配線分からん
 ・可変抵抗(ポット)でゲイン調整したいんだけど
 etc...
という方向けに【ケース加工・配線編】の連載を予定しています。


また、音色への影響がかなり大きい、オペアンプダイオードについては比較評価したネタがあるので、それもアップしようかと思っています。


それでは、ここで電子回路編は以上となります。

長々と読んでくださり、ありがとうございました。


超初心者向け徹底解説 〜【電子回路編(3/4)】distortion+の回路図解説「③電源部」〜

(2022/9/4追記)

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丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編)
~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編)
~配線レイアウトの解説~


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どうも、lenheyvan です。

前回は「②増幅部」をやりました。
lenheyvan.hateblo.jp


今回は、「③電源部」をやりたいと思います。

いつものように、これを別タブで開いてください。この図を見ながら読んでもらえると理解しやすいと思います。


「電源部かー、どうせ電源をオペアンプに供給したりLED光らせたりするくらいでしょ」と思ったあなた。

ちょっと待ったです!

確かに地味なんですが、かなり重要なパートです。
ここの出来次第でノイズを抑えたり、レスポンスの良い安定したサウンドを下支えしたり、エフェクターの品質にもろに表れるところです。

では、いってみましょう!


「③電源部」の解説

電源をオペアンプへ供給

はい。文字通りそのままです。

以前説明したとおり、シングルオペアンプだと7番端子が電源なので、ここに繋ぎます。

以上。


9V電源を分圧(R5、R7)

抵抗2本を直列に繋げると分圧と言って、電圧をその抵抗比率によって分けることができるんです。

例えば、次のように、9v電源の先に抵抗が1MΩと500kΩの2本が繋がっているとしましょう。
9vの電圧の2/3が1MΩの抵抗に、1/3が500kオームの抵抗にかかります。


これは単純に、抵抗の比率=電圧の比率となっています。

じゃあ、R5とR7はどうかと言うと、同じ抵抗値なので、4.5vずつに分圧されます。

「で?それが何か?」

ってなりますよね。

ただですね、これがかなり重要なんです。
この分圧がないとギターの信号はちゃんと歪んでくれません。

次の絵を見てください。

入力されたギターの信号はこうなってます。
基準電位が0vになっていて、0v〜9vの間を行ったり来たりします。

歪ませるには、これじゃ、ダメなんです。

何故ダメかと言うと、この状態だとプラス側にしか振れていません。
オペアンプで増幅するためにはプラスとマイナスの両方に振れる必要があります。

ではどうすれば良いかと言うと、基準電位を0から中点である4.5vへ引き上げるんです。


どうでしょう。分かりましたか?

整理すると、オペアンプは正電源(+)と負電源(-)で動作します。
一方、ギターの信号は0-9vなので、4.5vを与えることで、仮想的に正電源(+4.5v)と負電源(-4.5v)を作り出します。

これを、バイアス電圧と言います。


ここまでで理屈は分かったので、では次にこれを電子回路上どうするかを説明します。
やり方は簡単です。単純にオペアンプへの入力信号にこの電圧を与えるだけです。

R6の上に繋がっているのはどこですか?

そうです、非反転回路の入力部の信号です。

このように4.5vを入力信号に加えてやることで基準電位が0→4.5vに変わります。
これで上図の状態になりました。

そして、これを次の絵のように潰すと歪みサウンドの出来上がりです。
潰し方は次回の「④クリッピング部」で説明します。


【補足】
ーーーーーーーーーー
波形の頭が潰れると歪むと言うのは、イメージしずらいかも知れませんので、身近な例を考えてみました。

運動会で先生たちが使う拡声器を思い出してみてください。

「は〜い、こっち並んでね〜」

これはクリアな音です。



「コラァッ!そこの後ろふたりぃ!!いつまでしゃべってんだぁー!!」

これはどうでしょう?

はい、そうです。過大入力によって音が潰れます。

つまり、拡声器が許容している入力レベルを超えてるのですが、拡声器はそれ以上大きな音は出せませんから、頭が潰れるんです。この結果、

「ゴガー!ボボブブダギィ!!ヴィズバべジャブボッベンバーッ!!」

となるわけです。

素晴らしい!
まさに、ディストーションサウンド


これはギターアンプでも同じです。
昔のアンプはサックスに負けないように、単純に音を大きくするだけでした。
それが、過大入力することで音が潰れ、そのサウンドがカッコイイことに気づいた先人達は積極的にそのサウンドを使っていったわけです。

これが歪みサウンドの始まりです。

このように真空管は過大入力で潰れて歪みますが、これを電子回路で行うものが歪み系エフェクターです。
ーーーーーーーーーー

ノイズ除去(C4)

ここは、電源のノイズを捨てる場所です。
C4の先がGNDになっていて、通過した信号を捨てています。
コンデンサを通すことで高周波ノイズを捨てています。

ノイズ対策という意味では電池が最強ではあるのですが、電池切れの心配しながらステージに立つのって余計な心配が増えてしまいますよね。
なので、ACアダプターを使う人が多いと思いますので、ここを疎かにしていると電源ノイズに悩まされることになります。

モディファイのネタ帳

電源部はモディファイネタはあまり無いのですが、少し紹介しておきます。

バイアス電圧をズラす(R5、R7)

4.5vは中間点ですが、この中間点を微妙にズラすことで、上と下の波形の中央点がズレます。
すると何が起こるかと言うと、上の波形(プラス側)と下の波形(マイナス側)の潰れ方が非対称になります。

これを非対称クリッピングと言います。

実は真空管で生じる歪みは、上下の対称ではなく、非対称なんですね。これをいち早く取り入れたのが、BOSS OD-1、SD-1です。
※ OD-1、SD-1はあくまでクリッピング部でこれをやっているわけで、バイアス電圧をズラしているわけではないです。(念のため)

非対称だとハーモニクスが出やすくなり色気のある音色になります。対称だと実音強めのストレートな男らしい歪みになります。
これはどっちが良い/悪いではなく、完全に好みです。

レールスプリッターを使う

抵抗での分圧の話をしましたが、これを勝手にやってくれるレールスプリッターなるものがあります。

これを使いつつ、ガッツリ低音域以外を捨てる(つまり交流成分を捨てる)と電源が安定します。

ACアダプターは電池と比べると不安定なので、電圧が急に下がったりします。
例えば、電子レンジを回し始めたら一瞬電気が暗くなったりしますよね。あれは瞬間的に電圧が下がってます。

これをコンデンサでうまく電圧変化の波を吸収してやって、安定化させます。
そうすると、歪みサウンドの土台がしっかりすることになるので、出音がブレないんですよね。

私はこんな感じにしてます。

33Ωの抵抗の先に、220uFのコンデンサが並列にあります。並列なので440uFになります。

これはローパスフィルターを形成しています。
例のごとく、Electricdocで計算すると、10.9Hzです。

10.9Hz以上をGNDに捨てるわけですから、もうこれはほぼ直流です。信号ラインでは無いので、これくらい大胆にいっちゃって大丈夫です。

交流の帯域を捨てることで、電圧変化に強くしているわけです。

最後に

サクッと終わるかなと思ったら、意外とそれなりの量になりました。

バイアス電圧の仕組みは理解できましたでしょうか?

よく分からんけど4.5v与えとけばいいんでしょ、くらいの理解でも大丈夫です。ちゃんと動きますから。

次回は電子回路編の最後である、「④クリッピング部」をやります。

ここは、モディファイの選択肢が多く面白いところですので、お楽しみに♪


超初心者向け徹底解説 〜【電子回路編(2/4)】distortion+の回路図解説「②増幅部」〜

(2022/9/4追記)

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丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編)
~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編)
~配線レイアウトの解説~


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どうも、lenheyvanです。

前回は「①入力部」の解説をしました。
lenheyvan.hateblo.jp


今回は「②増幅部」にいきたいと思います。
いつのように、これを別タブで開いてください。この図を見ながら読んでもらえると理解しやすいと思います。


増幅部は非反転増幅回路になっていて、負帰還部で入力信号を増幅しています。

以前に説明した記事はこちらです。忘れてしまった方は、こちらから復習しましょう。
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「②増幅部」の解説

オペアンプの7番端子に抵抗(R5)から繋がっている線がありますが、これは「③電源部」で解説します。

信号を増幅(R2、R3+R4)

以前の記事に書いたとおり、抵抗の比率で増幅率が決まります

この回路ですと、R4という1個多く抵抗がついてますね。

R4には矢印が書いてありますが、これは可変抵抗を表していてDISTORTIONノブになります。
0~470kΩの間で調整可能です。

R4は左に絞り切ると470k(抵抗MAX)、右に絞り切ると0(抵抗MIN)となるように配線されていますので、MIN→MAXは470kΩ→0Ωということになります。

増幅率は(1+R2/(R3+R4))倍ですので、
R4がMIN(470k)の場合は(1+1M/(4.7k+470k))≒3.1倍、
R4がMAX(0)の場合は(1+1M/(4.7k+0))≒213.8倍です。


MAXで213.8倍という増幅率は、一般的なディストーションエフェクターとしては、あまり大きいな数字ではありません。

ただ、distortion+の場合はこれくらいの増幅率で十分なんです。
何故かは「④クリッピング部」で解説します。

周波数特性を決める(R3+R4、C3)

ここはdistortion+の肝となる重要な部分です。

またここでR3,R4が出てきます。
そうなんです。R3,R4は2つの役割を持っています。

増幅率を決める役割と周波数特性を決める役割です。


では、周波数特性とは何でしょうか。

純化のため、R4は一旦、ここから少しの間、無いものと考えてください。
 つまり、0Ω(DISTORTIONノブを右に絞り切った状態)です。


「周波数特性」を学問的に説明してもわかりにくいので、簡単に説明します。

誤解を恐れずに言うと「増幅する周波数帯域」と思ってください。
そして先に言ってしまうと、この回路では周波数特性は720Hzです。

つまりこういうことです。

増幅率は周波数帯域が720Hzまではゆっくりあがっていきます。この帯域では増幅率は高くありません。
そして720Hz以上の帯域では増幅率が高い状態になっています。

簡潔に言うと、720Hz以上を増幅する、と言えます。


ちなみに、BOSS SD-1も同じ周波数特性になっており、割と定番の定数です。



ではこれの仕組みの解説にいきます。

まず、C3、R3+R4でハイパスフィルターを形成しています。

AndroidアプリのElectricdocで計算させてみましょう。

R4はここでは無視するのでC3とR3の定数を突っ込んでみます。
※抵抗を直接に接続した場合の合成抵抗値は、単純に加算するだけです。



オペアンプの解説をしたときに、3番端子(非反転入力)と2番端子(反転入力)の電位差はゼロになるように動作するとお話しました。

つまり、ハイパスフィルターで信号がGNDへ逃げていくので、その分、オペアンプは電位差をゼロにするために増幅します。

言葉だけだとわかりにくいので絵を描いてみました。

周波数 a < b < c とすると、

周波数 a は少しだけ増幅(小)、
周波数 b はまあまあ増幅(中)、
周波数 c はめっちゃホリデー増幅(大)、

となります。


というわけで、DISTORTIONノブを上げていくと、派手でバリバリした歪みが出てくるのは、高音域がブーストされているからなんですね。


では、ここでR4も加えて話をしましょう。

R4は0~470kΩまでの可変抵抗です。
R4が大きくなればなるほど、周波数特性は下がっていきます。

例のごとく、Electricdocで計算させてみましょう。

R4がMIN(470k)の場合は7.1Hz、
R4がMAX(0)の場合は720Hzです。


そして、先程お話したように、R4は増幅率にも影響を与えます

R3,R4,C3の関係性をまとめると次のようになります。
R4によって増幅度と周波数特性が変わります。

R4がMAX(0)の場合が一番上の線、
R4がMIN(470k)の場合が一番下の線、
真ん中の線はその中間点です。

MAX :増幅率 213.8倍 周波数特性 720Hz
真ん中:増幅率 70.9倍 周波数特性 360Hz
MIN :増幅率 3.1倍 周波数特性 7.1Hz

となります。


いかがでしょうか?
非反転回路を使った増幅回路の仕組みは理解できましたでしょうか。

  • 増幅率はR2とR3+R4の比率で決まる。
  • 周波数特性はC3とR3+R4で決まる。

これだけです。
最初は一見難しそうに見える回路図も、理解すると意外に単純な構造だと思いませんか?

モディファイのネタ帳

ここまで来ると、メラメラと改造したい衝動が出てきませんか?

もっとゲインを上げたい、
もっと図太い歪みサウンドにしたい、
オペアンプを交換して自分好みのサウンドを探したい

なんて思うようになったら、あなたは既にエフェクターDIYの沼に片足はまっています。
いや、腰まで浸かっていると言って良いでしょう。

この沼にハマると楽しいですよ。
自分のアイデアを自分の手で具現化できるんですからね。

オペアンプ交換(各オペアンプの音色)については長くなるのでまた別途やるとして、
ゲインUpと図太いサウンドについてはここで紹介します。

ゲインUp(R2,R3,C3)

R2を大きく、R3を小さくすると、ゲインUpすることができます。
そりゃそうですよね。だって、R3とR2の比率がそのまま増幅率になるわけですから。

ただ、「そうすると周波数特性が変わってしまうんじゃないの?」と思われたあなたは賢いです。
そのとおり、周波数特性が崩れてしまいます。

なので、増幅率には関係しませんがC3も書いてあるのです。

周波数特性を変えずにゲインUpするためにはR2,R3と合わせて、C3も調整する必要があります。

例えば、よくモディファイするときに使われる定数として、R3を4.7k→1.0kにします。
そうすると増幅率は(1+1M/1k)=1000倍になります。

「213.8倍という増幅率は大きくないがdistortion+ではこれで十分」とお話ししましたが、
これはあくまでもオリジナルの場合の話であって、ダイオードをLEDに変えた場合なんかはこれくらいのゲインが欲しくなります。

周波数特性の話に戻りますが、このままだとR3が1.0k、C3が0.047uFなので、周波数特性は3.4kHzになります。
※例によってElectricdocで計算しました。

これだと、かなり高い周波数を高い増幅率でゲインUpするので、
線の細いキンキンした音になって、ゲインをちょっと上げると発振してピーピー鳴っちゃうと思います。

周波数特性を720Hzのままにするためには、C3を0.22uFにします。

R3が1.0k、C3が0.22uFだとちょうど周波数特性は720Hzになります。

これで、周波数特性は変えないまま、ゲインは213.8倍→1000倍へ上げることができました。

また、よくやるのが、R2を可変抵抗にしてしまうモディファイです。(GAINノブ)

DISTORTIONノブを上げたトレブリーなサウンドは好きなんだけど発振してしまって、そこまで上げられないというときに、GAINノブを下げることで、トレブリーなクランチサウンドを作ることができます。

ちなみにゲインは上げればあげるほど良いというものではなく、あまり上げ過ぎると、潰れて解像度の悪いモゴモゴしたサウンドになります。

ただ、音楽にルールなんてありませんので、そのサウンドをカッコイイと思えるなら、それは完全にアリです。

歪みの太さ(C3,R3)

オリジナルは主に720Hzから上を増幅しますが、この周波数特性を下げる方向に変えてやると太さがでてきます
ただ、その代わりに高音域の煌びやかさは減少します。

例えば、C3の定数を2倍にすると、周波数特性は720Hzの半分の360Hzになります。
C3の定数を2倍ということは0.44uFですので、0.22uFを並列にもう1つ付けます。

並列につけることで、スイッチで周波数を瞬時に切り替えするなんてこともできます。

コンデンサ並列に接続した場合の合成容量は、単純に加算するだけです。
 抵抗とは反対ですね。抵抗は直列の場合に加算するので。
 コンデンサの直列接続、抵抗の並列接続の合成値は数式がちょっと違って減少する方向にいきますが、ここでは必要ないので割愛します。

周波数特性が720→360Hzに下がるということは、歪ませる帯域が下がるということなので、
トレブリーなサウンドから、ファットなサウンドへ変化します。

最後に

負帰還回り(オペアンプ、ゲイン、周波数特性)と、
次々回に解説するクリッピング部の2か所は、出力されるサウンドに大きな影響を与えます。

モディファイするなら、まずはこの2か所から攻めるのが良いと思います。

では今回はここまでです。

次回は、地味ではありますがかなり重要なパートである「③電源部」にいきたいと思います。


超初心者向け徹底解説 〜【電子回路編(1/4)】distortion+の回路図解説「①入力部」〜

(2022/9/4追記)

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丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編)
~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編)
~配線レイアウトの解説~


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どうも、lenheyvanです。

これまで、抵抗・コンデンサ、フィルター回路、オペアンプの解説をしてきました。
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一応これでdistortion+のような、原始的な回路図は読める準備ができました。

さあ、いってみましょう。

まず、全体の回路図はこのようになっています。
これを別タブで開いてください。この図を見ながら読んでもらえると理解しやすいと思います。


おおまかには、赤枠の各パートに分かれていて、最終的に信号を増幅&クリッピングすることでディストーションをかけています。

今回から何回かに分けて、各パートを解説していきますね。

「①入力部」の解説

超高音域をカット(C1)

一番最初に小容量のコンデンサC1がGNDに繋がっていて、ローパスフィルターになっています。
ここで超高音域をGNDに落として捨てることで、ノイズを軽減してします。

※ノイズを軽減する代わりに、煌びやかさは失うわけで、そこはトレードオフになります。



でも、「あれ?おかしい」と思いませんでしたか?


そうなんです。フィルター回路ぽいけど抵抗が無いんです。実はこうなっている回路はよくあります。

カットオフ周波数はちゃんと計算できますが、インピーダンスという初心者にはちょっと取っ付きにくい話が出てきます。
私の記事は素人の方がディストーションを自作できることを目標にしているので、ここでは話しません。
(というか、私自身もプロの方に最近教えて頂いたくらいなので、適切に解説できるか自信が無いです。。)



【興味が無い方は読み飛ばしてください】
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少しだけ説明すると、一言で言うと、直流回路における抵抗が「抵抗」、交流回路における抵抗が「インピーダンス」です。


抵抗はRで表現し、V=IRと説明しましたが、
インピーダンスはZで表現し、V=IZです。


コンデンサの説明の時に交流を通し直流を通さないとお話ししましたよね。
これを言い換えると、高周波(より交流に近い)はインピーダンスが低く、低周波(より直流に近い)はインピーダンスが高い、ということになります。


まあ、この辺の小難しい話は知らなくてもディストーションは作れますので、気にしなくて大丈夫です。

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低音域をカット(C2)

次にC2が、中音域~高音域だけ通すハイパスフィルターになっています。
これも先程と同じく、抵抗の無いハイパスフィルターです。

ここまでで、超高域と低音域をカットして、オペアンプに入る前段でサウンドを整えてます。

オペアンプ保護(R1)

10kの抵抗になってますが、これはオペアンプ保護用です。
大きな電流がオペアンプに入力されるとオペアンプが壊れるので、通常1~10k程度の抵抗をここに入れます。

※R1からオペアンプへ入力する途中、R6から線が繋がっていますが、これは「③電源部」で説明します。

モディファイのネタ帳

歪ませる帯域調整-高音域(C1)

容量でカットする周波数を変えることができます。
小さくすると煌びやかだけどノイジー(煌びやかさMAXにしたいなら外してください)、
大きくするとノイズをより抑えられるけど煌びやかさが失われていきます。


歪ませる帯域調整-低音域、コンプレッションの調整(C2)

容量を小さくするとキレがよくなるけど薄くなる、
大きくすると太くなるけど低音域がモタつきます。

また、良くも悪くも、低音域が多めだとコンプレッション感も上がります。

歪みの質感の調整(R1)

ここはサウンドへの影響はあまり大きくないです。
抵抗が大きい方が若干Dirty(良い意味で泥臭い)、小さい方がClear(スッキリ)かなという印象です。

Keeleyモディファイではここの抵抗や、R8を4.7kにしていたはずです。

最後に

私はそれぞれのパーツの役割を耳でも確認したかったので、ボロボロのdistortion+を中古で入手し全パーツを外してソケットをつけました

出展:Garrettaudio

↑これを各パーツの足の部分に半田付けして、抵抗やコンデンサを差し替えるだけでサウンドチェックできるようにしたのです。

こんな感じです。

ソケットつけるのは中々大変ですが、一回やってしまえば後はめちゃくちゃ楽ですよ。

やっぱり理屈より最後は自分の耳ですからね。


ここで作業について、ひとつアドバイス

モノによりますが、市販品の半田はガンガン温めても、半田吸い取り線が吸ってくれない場合があります。
(特にオペアンプは難儀します。。)

そういうときは、取り外したい足の半田に上からさらに半田を盛ってから、吸い取ってみてください。

そうすると、自分がつけた半田を吸い取るときに元々の半田も一緒に吸ってくれるのでキレイに取れます

オペアンプダイオードのような熱に弱い部品は熱を与えすぎると壊れてしまうので、かなり有効な手段です。

このやり方を知らずに、何台の基板を壊したことか。。



では、今回はここまでです。

次回はこのエフェクターの心臓部である、「②増幅部」にいきたいと思います。



エフェクター自作講座【基礎編(3/3)】〜オペアンプ〜

どうも、lenheyvanです。

 

前回までで抵抗・コンデンサの役割、フィルター回路の説明までしてきました。

今日はオペアンプの話をしようと思います。

 

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(2022/9/4追記)
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kindleエフェクター自作本を出版しました。

丁寧に分かりやすい構成を意識して書いていますので、素人の方でも体系的に一から理解できる入門書になっています。

これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
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世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編) ~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編) ~配線レイアウトの解説~

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オペアンプとは

こんな虫のような形のICです。エフェクターの基板を見たことがある方は、見覚えがあると思います。

f:id:lenheyvan:20220312120041j:plain

 でも、オペアンプって何するもの?「心臓部」って言われてる分からんし、って感じですよね。

 

一言で言うと、信号を増幅(ゲインアップ)するものです。

まずはそのくらいの理解で大丈夫です。

 

オペアンプの種類

実はオペアンプには種類があります。

エフェクターで使われるものとしては、

があります。

 

なんてことはなく、シングルオペアンプは1回路入り、デュアルオペアンプは2回路入り、というだけです。

 

OD-1なんかは、クアッドオペアンプと言って4回路入りですが、1つのオペアンプに回路がいっぱい入っている、というだけのことです。

 

私がエフェクターをいじりはじめて、一番最初にやろうとしたのが、MXR Distortion+のオペアンプ交換です。

 

ド素人だったので、オペアンプを交換し、ウキウキして、さあサウンドチェック。

 

あれ!?音が出ない。

 

そりゃそうです。だって、シングルオペアンプ用の回路にデュアルオペアンプを載せちゃったんですから。

 

Distortion+は原始的な741系のオペアンプを採用しています。

μA741とかLM741というシングルオペアンプです。

(頭のμAとかLMとかは製造しているメーカーによって違うだけです)

 

そこに、デュアルオペアンプの定番であるRC4558Dをつけてしまったのです。

 

シングルオペアンプじゃダメということは理解できたのですが、どうしてもRC4558Dをつけたかったので、掲示板に投稿して、どうすればいいのかを聞いてみました。

 

知識が無くて言葉足らずだったんでしょう、意図がうまく伝わらず、

「やりたいことが分かりません」

「シングルオペアンプ用の回路ならデュアルは使えません」

「デュアルからシングルに変換したい意図が分かりません。わざわざそんなことする必要ないと思います」

と言われてしまい、途方に暮れました。

 

今では良い思い出です。

 

オペアンプの構造

これを見てください。(例のごとく手書きですみません)

f:id:lenheyvan:20210220101806j:plain

 

各端子の意味は次のとおりです。デュアルオペアンプのほうは1、2がついてますが、回路が2つなので、2個分使えるというだけです。

  • IN+:非反転入力
  • IN-:反転入力
  • OUT:出力
  • V+:正電源
  • V-:負電源

 

反転?非反転?

なんじゃそりゃだと思いますが、ここでは入力が2つあるという思ってもられば良いです。

出力は読んで字のごとく、オペアンプで増幅した信号を出力します。

正電源は、いわゆる電源のことです。エフェクターの場合ここに9v電源をつなぎます。

負電源はGNDにつなぎます。電位がゼロということですね。

 

どうやって増幅されるの?

ではどういう仕組みで増幅されるのでしょう?

 

非反転増幅回路

エフェクターでよく使われる非反転増幅回路で説明します。

Distortion+も非反転増幅回路を採用しています。

 

「非反転増幅回路」という難しい名前はひとまず置いておいて、まずはこの回路図を見てください。

f:id:lenheyvan:20210220105401j:plain

 

順を追って説明します。三角形のやつがオペアンプです。

①INから入力信号が入ってきます。(ギターの信号です)

オペアンプ非反転入力に入ります。(+のほう)

オペアンプの出力から二股に分かれていて、上のほうへいくと反転入力(-のほう)へ戻しています。これを負帰還と呼びます。

④負帰還があることによって、図にあるとおり、ゲインが(1+R1/R2)倍されて、出力されます。

 ※非反転入力(+)と反転入力(-)は電位差がゼロ(つまり同じ電位)になります。なります、というより、しようとします。そうなるようにするためにオペアンプは信号を大きくするように動作します。それが結果的に増幅となるわけです。

 

難しいように思えますが、上のような回路図になっていたらゲインが増幅される、増幅率は2つの抵抗値から算出できる、ということだけ理解できていればOKです!

 

ちなみに、非反転増幅回路というだけあって、この回路を通っても信号は「反転しない」です。位相という言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、信号の波(プラスとマイナス)をそのまま増幅します。

 

一方、反転増幅回路というものもありますが、そちらは位相が逆になります

つまり、信号のプラスとマイナスが逆になるということです。

 

通常はあまり気にする必要はないですが、以下のような2つの信号をMIXするブレンダ―のようなエフェクターでは、それぞれの位相を打ち消してしまうので気にする必要があります。

もちろん、このようなエフェクターでは位相を変えるスイッチがついているので切り替えるだけですが。

 

 

 

 

蛇足ですが、ギターのピックアップも向きがあります

フロントピックアップとリアピックアップを正しい向きにつければ、セレクターでMIXポジションにすると、2つの信号が合わさったものになりますが、片方を逆につけると打ち消しあっちゃうんです。

 

ただ、論理的には上記のとおり、それぞれ打ち消しあってしまい信号はなくなってしまうのですが(例えば+1.0v と -1.0vを足すとゼロですよね)、現実世界では微妙にズレるので、中途半端に打ち消された信号になります。

これをフェイズサウンドと言いますが、独特の面白いサウンドなので、敢えて使う場合もあります。ブライアンメイなんかはフェイズアウトしたサウンドが出るスイッチがギターに付いていますよね。

 

話を元に戻しますが、増幅は先程の計算式のとおりなので、例えばR1が1MΩ、R2が4.7kΩの場合、1000/4.7=212.7倍の増幅ということになります。

(これはDistortion+の定数です)

 

シングルオペアンプの回路にデュアルアぺアンプをつけれるのか?

冒頭の話に戻りますが、Distortion+のようなシングルオペアンプの回路にデュアルオペアンプをつけられるのか?ですが、オペアンプの構造」に記載した仕組みを知っていれば割と簡単につけることができます

 

もちろん回路を改造しても良いのですが、現代のエフェクターはプリント基板です。(緑色の板に、銅色の線が各パーツ間を道路のようにつないでいるアレです)

 

それを改造するのはちょっとハードル高いので、私は変換キットを作りました。

 

正直に白状すると、最初、プリント基板でやろうとして、ぐちゃぐちゃになって、最後はジャンパー線(今度説明します)で継ぎ接ぎフランケン状態にしてやっと音が出るようになったのですが、そんな苦労しなくていいです。

 

これが私が作ったキットです。2つのICソケットを使って作成しました。

 

上段にデュアルオペアンプを載せます。

画像がちょっと斜めになってますが、端子の番号は

 4 3 2 1

 5 6 7 8

です。

f:id:lenheyvan:20210220113034j:plain


シングルオペアンプ2つをデュアルオペアンプに変換する回路キットはよく市販されているのですが、これはいくら探しても無かったんです。

 

これがあると、すっと、シングルの回路にデュアルを載せてサウンドを試してみることができるのですごく便利です。そして作るのは超簡単です。

 

 デュアルオペアンプをD(画像の上段)、シングルオペアンプをS(画像の下段)とすると、こうすればよいです。

Dの1番→Sの6番

Dの2番→Sの2番

Dの3番→Sの3番

Dの4番→Sの4番

Dの5番→Sの5番

Dの6番→接続しない

Dの7番→接続しない

Dの8番→Sの7番

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これにデュアルオペアンプを載せて、シングルオペアンプ回路につけると、デュアルオペアンプの1回路だけ使用することになります。

RC4558Dなんかはシングル版は無いので、この回路で使いたい場合はこういうのがあると便利です。あくまでもサウンドチェック用なので、デュアルを採用するとなったら、回路設計はデュアル用にして作ってしまえば良いです。

 

最後に

オペアンプについてざっと解説してみました。

オペアンプという虫のようなパーツにちょっと親しみを感じてもらえたら幸いです。

 

よく電子回路の世界ではと呼ばれたりします。

 

ポタアンでもオペアンプは使われていて、製品によっては交換可能なものもあります。

ただ、オーディオとしては高性能なんだけどもエフェクターではイマイチ、

逆にオーディオ的にはローファイ過ぎてイマイチなものがエフェクターではいい味を出す、なんかはよくあることであり、そこがエフェクターの面白いところです。

 

もちろん、オーディオ用のハイファイなものがエフェクターにマッチすることだって当然あります。

 

一番は、色々試してみて、最後は自分の耳で判断することだと思います。

 

次回はいよいよ、Distortion+の回路図の徹底解説にいきたいと思います。

 ↓↓↓

 

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エフェクター自作講座【基礎編(2/3)】〜フィルター回路〜

どうも、lenheyvan です。

 

今日は抵抗とコンデンサを使ったCRフィルター回路のお話をしようと思います。

Cはコンデンサ、Rは抵抗です。 

 

前回お話しましたが、仕組みさえ覚えれば、計算はツールでやればいいのでめっちゃ簡単です。 

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(2022/9/4追記)
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kindleエフェクター自作本を出版しました。

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これからエフェクター自作を始めたい方は是非どうぞ。
クローンやオリジナルエフェクター製作ができるところまでをカバーした内容となっています。

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(前編) ~電子回路の解説~

世界一分かりやすい歪みエフェクターの仕組み(後編) ~配線レイアウトの解説~

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ローパスフィルター

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ロー(低音)をパス(通過)するフィルターです。

つまり、低音域だけ通します

 

”だけ”はちょっと語弊がありますね。

正しくは、「ある一定の周波数以下を通す」です。

 

 仕組み

信号は左から右へ流れるものとみてください。

抵抗を通って、二股に分かれた下のほうにはコンデンサがついていて、その先にGND(※)があります。

※GNDは直訳すると「地面」です。調べると「基準電位との差がゼロ」とか出てきますが、電流のゴミ捨て場と覚えてください。そんなイメージで大丈夫です。

 

前回説明したように、コンデンサは高音域だけ通します。それを捨てるということは、つまり、二股の右には低音域だけ流れていくことになります。

 

はい、これでローパスフィルタの出来上がりです。

 

ハイパスフィルター

 f:id:lenheyvan:20210219234122j:plain

 

こちらはハイ(高音)をパス(通過)するフィルターです。

つまり、高音域だけ通します

 

 仕組み

見ての通り、ローパスフィルタの逆です。

 

コンデンサを通って、二股に分かれた下のほうには抵抗がついていて、その先にGNDがあります。

 

コンデンサは高音域だけ通し、二股に下の抵抗を通って低音域は捨てられます。つまり、二股の右には高音域だけ流れていくことになります。

 

はい、これでハイパスフィルタの出来上がりです。

 

なんかモヤモヤしませんか?

大抵こんな感じの説明がされていますが、「ちょっと待て待てい!」と思ったあなた。鋭いです。

 

結局、GNDに繋がっているコンデンサがあればローパスフィルターだし、

抵抗があればハイパスフィルターじゃん。初段の抵抗とコンデンサいらなくね?

 

はい、おっしゃるとおり。

あなたは正しい!!

 

最初の抵抗・コンデンサは別に無くてもいいんです。

 

じゃあ何でついてるのって話ですが、実はこの抵抗・コンデンサが無いと、どの周波数から下を捨てる/上を捨てるを調整できないんです。

 

カットオフ周波数

前回もちらっと出てきましたが、どこから捨てるかの周波数を「カットオフ周波数」と呼びます。

 

この絵をご覧ください。(手書きの汚い絵ですみません・・・)

f:id:lenheyvan:20210219235318j:plain

 

縦軸はゲインになっていて、0dbは素の信号です。

横軸は周波数になっていて、右に行くほど周波数が高くなります。

 

カットオフ周波数と赤字で書いている地点の周波数が、この周波数を境にカットしますよ(=カットオフ周波数)です。

 

厳密には記載のとおり、カットオフ周波数が-3dbの地点になります。

 

 

例えば、「いやー、ミッドローが多すぎてキレがないんだよなー。200Hzから下を削りたいんだけどなー」って時、ありますよね。

 

そんなときは、カットオフ周波数を200Hzにすればいいんです。

 

ローパスフィルタの抵抗を10kΩ、コンデンサを79.577nFにすれば200Hz以下をカットできます。

 

え?その数字どこから出てきたかって?

それはツールに計算してもらいました。

 

 

下の画像は私のAndroid携帯に入れている Electrodoc というアプリです。

(画面の液晶割れあり。。見にくくてすみません・・・)

 

f:id:lenheyvan:20210220000721j:plain

 

 

 

このアプリでR(抵抗)、C(コンデンサ)、周波数を入れると勝手に計算してくれるんです。

今狙ったカットオフ周波数は200Hzだったので、200Hzを入力して、Rは仮に10Kとしてみました。そうするとCが自動算出されます。このフィルタ回路の抵抗が仮に4.7kΩだと、Cの数値はまた変わります。

 

つまり、抵抗とコンデンサの定数で、カットオフ周波数をコントロールすることができるんです。

 

よくエフェクターの入力部の回路でもたつきになる低音域をローパスフィルターでカットしたり、ノイズの原因になる超高域をハイパスフィルターでカットしたりします。

 

次の例はかの有名なRangeMasterの入力部です。

 

ロリー・ギャラガーやブライアンメイが使用していたことで有名過ぎるペダルですが、YouTubeなんかで観てもらえれば分かるとおり、トレブルブースターというだけあって、トレブルがかなりゲインアップされたサウンドです。

 

例によって村田さんが、いつもの分かりやすい語り口で説明してくれています。

2:02あたりからです。


Treble Booster〜ロック・ギター・サウンドの礎を知る【デジマート DEEPER'S VIEW Vol.02】

 

回路的には、入力部で低音域をガッツリ削ってからトランジスタ(OC44というゲルマニウムトランジスタ)で信号を増幅しています。

f:id:lenheyvan:20210220003349j:plain


赤丸の部分がハイパスフィルターになっています。

コンデンサが0.005uF、抵抗が68KΩなので、ツールで計算すると、カットオフ周波数は468Hzより下をカットしています。

 

イコライザーを使う方ならわかると思いますが、ギターで468Hzというと、低音域ではなく、完全に中音域ですよね。

 

敢えて中音域から下をバッサリとカットすることであの独特のサウンドを生み出しているわけですね。まさにトレブルブースター。

 

私も結構好きで、何台か自作しました。

今は、一番状態の良いOC44のものを1つだけ保有しています。

ゲルマニウムトランジスタは個体差が結構あるんですよ)

 

最後に

 

どうですか。

割と簡単じゃないですか?

 

これが分かると、カットしたい音域を自分でコントロールすることができるので、イチから作らなくても、手持ちのエフェクターサウンド特性をチューニングするくらいは十分可能です。


例えば、今日ご紹介したRangeMasterの入力部にローパスフィルターも足して、高音域もカットすると、ハイミッドだけ残りますよね。

そうすると、ミドルブースターの出来上がりです。(バイパスとローパスのカットオフ周波数をうまく調整してバランスを取る必要はありますが)

 

そうすれば、マイケルシェンカーのようなワウ半止めサウンドだって作られちゃいます。

(抵抗とコンデンサの二つを足すだけで激変ですよ。面白くないですか?)

 

ここまでで、抵抗・コンデンサの役割、CRフィルターについて説明してきました。

 

次回はオペアンプにいきたいと思います。

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